「れ」から始まる短いものがたり

 

「連絡待ち」の話をしよう。
君の「連絡待ち」デビューはいつだい?
僕の「連絡待ち」デビューは、小学校1年生くらいだ。
働いてる母親が、仕事終わりの電話をしてくるのを家で待つ。
それだけのことだけど、1人で待っていたから、寂しいものだった。
何より僕はひと二倍、甘えん坊だ。
その寂しさは、君の想像をはるかに越えている。

その次に「連絡待ち」の脅威を思い知ったのは、高校生のとき、好きな子とメールをしている時だった。
なかなか返信が来ない。
はて、風呂にでも入っただろうか。
いやいや、夕方の5時だぞ。
それは、早すぎる。
では、帰宅中で、ケータイのチェックを忘れているだけであるな。
僕は、なんて女々しいのだ。
自分のケータイを部屋のベッドに投げつけた。
夜の8時になり、まだ返信は来ない。
センター問い合わせをした数は、星の数。
もどかしさに負けた僕の貧乏ゆすりは、震度2に軽く及んでいただろう。

兎にも角にも、「連絡待ち」というのは、人間にとって脅威の状況である。
到着の連絡待ち。
恋人からの連絡待ち。
何かしらの合否の連絡待ち。
雨天中止か否かの連絡待ち。
スパイ作戦中の仲間からの連絡待ち。
色々あるが、なるべくなら、連絡を待つ状況は回避したいものである。

さて、大学生になった今、今日も僕は「連絡待ち」の状況に身を置いていた。
右手には、ケータイを持って、「連絡待ち」のプロトタイプを装っている。
しかし、僕は、もう「連絡待ち」上級者である。
勝手にヤキモキするだけの「連絡待ち」は、遠い昔に卒業しているのだ。
今日は、「連絡待ち」の片手間に、このブログを更新してしまうという、上級テクニックの1つを行っているところだ。
君も見習いたまへ。

夏の夜だ。
外にいると、蚊の動向が気にかかるが、家を出る前、虫よけスプレーにまみれて来たから大丈夫であろう。
しかし、数々の「連絡待ち」を経験した僕でも、今日のケースは初めてだ。
なんせ、いかにも安いアパートの隅に隠れて、ビニール袋一杯の蝸牛の殻を左腕に下げているのだから。
そんな分けの分からない状況でも、次は何をしたら良いのか、僕は待つしかない。

 

 

「」から始まる短いものがたり
2012.6.22


 


「」から始まる短いものがたり6