『ノリたい‼︎』

 

4 好青年

「そんな安易なことがあるか」
僕は彼女にそう言ったけれど、彼女は「そうかしら?」とでも言うように上目遣いでストローを吸った。
彼女の口の中に滑り込むのはアイスココア。
冬なのに、アイスココア。
別に良いのだけれど。
確かに毎年、彼女は冬に赤いコートを着る。
だからって「赤いコートの娘」なんて誰が言うんだ?
でも、彼女は「よく言われる」と言う。
それから、「それが気に入っている」とでも言うように、上目遣いでストローを吸う。
そして僕はその仕草を見て思ってしまう。
あぁ、可愛いな、と。
それにしても、可愛いな、と。
とてつもなく、可愛いな、と。
「ところで」と可愛い彼女は言う。
「ところで免許は取れそう?」
「さぁ?どうだろうか。まだ始まったばかりだらね」
「お願いよ?きっちり免許を取って、まずは私の話を聞いてよね」
もちろんさ。
僕はそれを声には出さずに頷いた。
大体、君以外の話なんてちっとも興味が無いのさ。
「君の方は」と僕は言う。
「君の方はどうなんだ?」
「私はね、一先ずイイ人を見つけたわ」
そう言って彼女は笑う。
悪戯に笑う。
可愛い。
非常に、可愛い。
恋に落ちる勢いだ。
いや、もう落ちている。
すこーんと落ちている。
恋に。
でも僕は知っている。
これが叶わぬ恋ということを。
でも、だから何だ。
僕はこの関係を築いていれば、いつかチャンスが来ると信じている。
調子にさえ乗らなければ、なんとかなるはずだ。
そう、調子にさえ・・・。
以前僕は、ずいぶんと調子に乗っていた時期がある。
調子を乗りこなしていたと言っても過言ではない。
片手離しなど、屁のカッパ。
両手離しは、朝飯前。
その上、ノーヘルだ。
安全運転など、くそくらえ。
その上で、僕は大きな事故を起こした。
もちろん、免許は失効だ。
立ち直るのは、容易ではなかった。
しかし、それはまた、転機でもあった。
僕の友人が一つアドバイスをしてくれた。
「君はね、調子になんか乗らないで、相談にでも乗った方がいいよ」
その言葉はまるで天からのお告げのように僕の心に響いた。
だが、僕は知らなかった。
どうやったら相談を乗りこなせる様になるのか。
調子免許は知らぬ間に持っていた。
相談免許は一体、どこで手に入るのだ?
そんな僕の心を見透かしたように友人は言った。
「あれだろ。教習所だろ、まずは。免許関係は、教習所だろ」

 

つづく

『ノリたい‼︎』-4-


ロシア製 憧れの君へ告白! ロシア語 「大好き」 ラブカード


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test003

ノリたい!! 4
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