あるアパートでの一件

 

14

101号室の新住人

目の前で、おデブちゃんが肥えていくのを見るのは、どんな名作映画を観るより最高だった。
まずは、低カロリーの蕎麦の食べっぷりを観察。
それから今後、どうやって肥えてもらうか、作戦を練る。
とりあえず、一皿目を食べ終わった。
タイムは決して早いわけではない。
そこについても今後、しっかり教え込まなくちゃ。
「さ、まだあるわよ!どんどん食べて!」
「いや、もういいです。」
意外な返答が返ってきた。
え?まさか、少食のおデブちゃんなの?
それは、最悪よ。
少食なおデブちゃんほど、最悪なおデブちゃんは無いわ!
「お、じゃあ、その分を俺にくれよ!」
ガキみたいな顔した警官が、お代わりを要求してきた。
「あんたにあげる分はないの!というか、食べたならさっさと出ていってくれない!?」
「おまっ!俺を誰だと心得る!この印籠が目に入らんか!」と警察手帳を手に、立ち上がって叫んだところで、彼は上司に叩かれた。
「恥ずかしいにも程があるぞ!しかし、美しいお姉さん、申し訳ないが、この若造に、もう少しばかり蕎麦を茹でてはくれないか!」
「ダメよ。残りのお蕎麦は全部、チャーミングなおデブちゃんの胃袋に収まる予定だもの。」
警官二人は肩を落としながら、座った。
「良いんじゃない?こいつ、ダイエットするらしいし。なぁ?」
おデブちゃんの友人の男が信じられないことを言った。
おデブちゃんの方を見る。
「う、うん。そう。」
ガッテム。
ダイエット!?
ありえない!!
ありえない!!!
ありえないわ!!!!
思わず、絶叫しそうになったとき、上の部屋から大きな物音がした。
「なんだ!」
「事件か!」
警官二人が叫ぶ。
そして、玄関の方に走る。
おデブちゃんも重そうな身体を持ち上げて歩き出した。
私も面白そうだから、続く。
というか、おデブちゃんをもっと観察したい。
私の少し前で「おいおい。」とおデブちゃんの友人が呟いたのを聞き逃さなかった。

 

 

「あるアパートでの一件」-14-
2013.7.22


DHC ダイエットパワー 20日分 60粒

あるアパートでの一件 14