「laundryって洗濯って意味」

 
気付けば、二人の子供に恵まれた。
一人は坊や(2歳)で、一人はお嬢(8ヶ月)。
「上手に産み分けたね」なんて言われるが、たまたまだし偶然だしまやかしにも似ているし運命であると言ってもおかしくないからコメントしがたい。
とにもかくにも、僕と妻と子供たちは家族を営んでいる。
それぞれの思惑を抱えながらの営みである。
僕は酒を飲むことしか考えていないし、妻はパズルゲームアプリの事しか考えていない。
坊やはアマゾンプライムでヒーローを観る事しか考えていないし、お嬢はティッシュを見つけたら一目散に食べることしか考えていない。
しかし、その状況は決してカオスではなく、多分それぞれが幸せだから素晴らしい。

ところで、僕は酒を飲むばかりでなく仕事をしているが、僕の稼ぎだけではやっていけないために妻はパートタイムで働いている。
その関係で子供たちは保育園のお世話になっているわけだけど、これはこれでまた大変なの。
僕は仕事をしたり酒を飲んだりで大半家にいないのだけども、妻はそうはいかない。
パートタイムを終えて、疲れた体に鞭を打ち、保育園に子供達を迎えに行く。
家に帰れば、欲望むき出しの子供たちの相手をしながら晩御飯をこしらえる。
僕はその間、職場にいて、若い社員と談笑する合間を縫って仕事をする。
談笑の合間の仕事を終えて家に帰る頃には、子供たちを寝かしつけた妻も、疲れて眠ってしまっている。
「ただいまー」と小声での報告を済ますと、僕はまず風呂に入る。
そして妻の作ってくれた晩御飯を食べながら酒を飲む。
少し酔ってきた頃に、ふと思い出したように洗面所に行き、洗濯機をナイトモードで回す。
しばらく経ったあと、仕上がった洗濯物を干す。
そして思った。
今、僕が、好きな人のためにできる事は、まだ二人だけだった時のように映画のチケットを取ることでもなく、アクセサリーを買ってあげることでもなく、デートに誘うことでもなく、一回でも多く乾燥機能を使わずに洗濯機を回し、それを干すことである、と。
さらにアルコールに濡れた脳みそで考える。
僕と妻は、「彼氏」「彼女」の関係ではなくなった。
それから、二人だけじゃなくなった。
布団では元彼女、つまり現妻と子供たちが寝ている。
不思議だ。
自分で子供たちをこしらえておいて思う。
不思議だ。
目の前にあるのは、好きな女性と男の子と女の子が寝ている光景。
それは紛れもない家族だ。
家族のために今僕ができることと言えば、なるべく音を立てないように洗濯物を干す事である。

ゆっくりと洗濯バサミのバネを広げながら思い出す。
「彼女」が「妻」になった当初のこと。
結婚指輪を作る時のこと。
結婚指輪の内側に文字を入れるサービスのこと。
刻印する文字を決める時のこと。
その時、僕は妻に尋ねた。
「結婚生活で一番大事な事ってなんだと思う?」
僕自身の答えはすでに決めていた。
それは「ユーモア」である。
ユーモアは人間を救う。
ユーモアは世界を救う。
ユーモアは愛を育む。
そうでしょ?
まぁ、そんなことよりも、妻の答えである。
妻は、僕の質問に間髪入れず答えた。
「洗濯」
僕はその言葉を聞いて笑った。
それこそがまさに僕にとってのユーモアだったからだ。
そして、僕の指輪の内側には「laundry」の文字が彫ってある。

僕は深夜に洗濯物を干しながら、その事を思い出した。
そして、妻には先見の目がある事を思い知って、一人で笑った。
結婚生活において、洗濯が重要なのは間違いなかったよ。
僕の姿を見てくれよ。
遊び盛りの子供たちのおかげで、一瞬で溜まる洗濯物を消化しているぜい。
いくら洗っても無くならない洗濯物を消化しているぜい。
これはもはや永遠の戦いだ。
そんな事を考えてまた笑えてくる。
寝ていても僕の生きる時間にユーモアを添えてくれる妻の事を、僕はやっぱり好きだと思った。

起きているほとんどの時間を家の外で過ごす僕が行うこの洗濯で、明日の妻が楽になればいい。
いや、楽にしなきゃならない。
だって、僕はlaundryの文字を毎日左手の薬指に背負わせているんだもの。
これはもはや僕の結婚生活における使命である。

 

kotoba-asobi


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