kotoba-asobi

 

ヨーグルトと付き合っている夢を見た。
覚えている場面と言えば、冷蔵庫の中のように寒いところで、僕とヨーグルトは二人で仲良く星空を見ているところだ。
僕は「寒くて凍えそうだ」と言った。
ヨーグルトは「でも、私はこのくらいでないとすぐに老けちゃうわよ」と言う。
だから僕は「君のためなら我慢しよう」と強がった。
「もし、耐えられないくらい寒いなら、私の中に入る?」
ヨーグルトは空をぼかす月明かりのように優しく言った。
僕は一度だけ頷くと、ヨーグルトの中に入った。
別に暖かいわけではなかったけれど、冷たいわけでもなかった。
僕は生まれて初めて、乳酸菌を肌で感じた。
しばらく二人は黙って、お互いの体温を楽しんでいた。
最初に沈黙を破ったのは彼女で、「ひとつ聞きたいことがあるの」と言った。
「なんだい?」僕は自分の全てを優しさに変えて言った。
「どうしてあなたは、毒みたいな食べ物を週に5回も食べているくせに、『30年後の僕はどうなっているんだろうか』なんて言えるの?あなたに30年後がやってくると思うの?」
僕はすぐに答えられなかった。
しばらく優しい月明かりを見ていた。
あれが、ただの石の塊なんて、僕はやはり信じられなかった。

どれくらい経ったろうか。
僕はようやく答えた。
「全ては希望的観測でしかないよ。
だから、君と付き合うのさ。少しでもなんとかなるように」
それを聞いたヨーグルトは少し笑って「かわいい人ね」と言う。
僕は照れなかった。
そこに愛が無い気がしたからだ。
「私はあなたに何も与えることはできないわ。だって、私だって生きるのに必死なのだもの。あなたの体に構っている暇はないの。ただ、手を繋ぐことくらいしかできないの」
そう続けたヨーグルトの言葉に僕はやっと愛を感じた。

目を覚ました僕は、そんな夢の余韻に浸りながらリビングに行って、食べかけのポテトチップスをばりばりと食べた。
良い、朝だった。


test003

ヨーグルト
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