「初の詣へ、君と参りたい」
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自分の中の1000円の価値が下がったのはいつからだろうか。
机の上に置いた1000円札を見て思う。
中学生、いや、高校生くらいまでは、1000円は侮れない存在だった。
別に今も侮っているわけではないけど、世界と戦うにはあまりにも戦力が小さすぎる。
昔は1000円あれば、いくらでも世界を相手にできたのに。
1000円が財布にあることが素晴らしかった幼き時代。
週刊漫画誌が約一ヶ月分買える。
あんまんは約10個買える。
安いファミレスのトリノ風ドリアは三皿食べれる。
100円のハンバーガーなんて、丸々10個買える!!
放課後、フリードリンク付きのカラオケだって行けたぞ!!
1000円札は素晴らしい!!
それが今となってはなんだ!!
1000円札一枚では「スーパーライトダウン」も満足に買えないじゃないか!!
しかし、俺は慌てない。
大人になるということは、きっとそういうことだ。
分かっている。
大人の世界は厳しい。
1000円では許してもらえないことがたくさんあるのだ。
でも、俺は1000円にたいへんな価値を見出だしていたあの気持ちを忘れたくない。
よって、お賽銭は1000円札一枚だ!!
別にお金が無いから1000円というわけではない。
なぜ5000円をお賽銭に使わないのか。
1000円札が5枚分だぞ!?
ありえない。
賽銭に使うなどありえない。
ハンバーガーがいくつ買えると思っているんだ!!
「スーパーライトダウン」だって、なん着買えるか分かったもんじゃない!!
そういう訳で、賽銭には1000円が相応しい。
10000円?
おいおい、本当に言っているのかい?
もはや、ハンバーガーで語るまでもない。
しかし!!
「スーパーライトダウン」は限りなく買えるぞ!!
何年先の初詣の分まで買えるか分からない。
初めての詣でそこまでお金を掛ける訳にはいかない。
初心者が調子に乗ると痛い目を見る。
そういう訳で、賽銭には1000円が相応しい。
さて、賽銭も決まった。
いよいよ、初詣の準備も残すところは、誰と行くかである。
それはもう、明日考えよう。
「初の詣へ、君と参りたい」 -3-
2013.1.3