「初の詣へ、君と参りたい」
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その日は早朝からユナクロに並んだ。
初詣には毎年たくさんの人が行くと聞く。
その分「スーパーライトダウン」は売れているはずなので、オープンと同時に駆け込まなければ手に入らないのではないかと危惧したからだ。
いや、もはや売り切れていることも十分にあるが、最善は尽くす。
なぜなら、人生初の詣なのだから手を抜くわけにはいかない。
思った通りだった。
オープンの時間が近づくにつれて、ちらほらと人が並び始めた。
どうやら、「スーパーライトダウン」の競争率は半端無いみたいだ。
すでに「スーパーライトダウン」らしきものを着ている人もいる。
2着目、3着目が欲しいのか。
いったい何回、初詣に行くつもりなのだ。
というか、2回目からは初詣ではない。
ただの詣だ。
ここで一つの疑問が浮かんだ。
「人は、初詣に行くためにスーパーライトダウンを着るのか。それとも、スーパーライトダウンを着たいがために初詣に行くのか」
なぞである。
だけどなんだか「スーパーライトダウンを着たいがために初詣に行く」方がクールな感じがする。
なので俺は、そういうテイにしておこう。
しかし、どちらにせよ新年早々人を並ばせるとは、やるなユナクロ。
店がオープンすると同時に、俺は駆け込んだ。
しかし、どこにスーパーライトダウンがあるのか分からない。
そんなことで地団駄を踏むわけにはいかない。
「あ、あの、初詣に向けてみんな買うスーパーライトダウンって、どこにあります?」
店員に聞いた。
店員は一瞬「?」となったが「スーパーライトダウンですね?こちらです」と案内してくれた。
そこには、たくさんあった。
売り切れなど心配ないくらいたくさんあった。
きっと、初詣に向けて大量に発注をしていたのかもしれない。
やるなユナクロ。
俺は、色違いのスーパーライトダウンを二枚買って店を出た。
さて、アウターは手に入れた。
これで寒さに耐えられるし、何より、軽やかな身のこなしで参拝ができるに違いない。
次は、お賽銭をいくら入れるか悩まなくてはならない。
非常に重要なことだ。
家に帰ったらゆっくり考えよう。
「初の詣へ、君と参りたい」-2-
2013.1.2