「初の詣へ、君と参りたい」

 

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初詣というのは、あくまでも己と神社・寺院の関係性に成り立つ事だ。
だから、一人で行くのが一番簡潔だ。
他者がいたところで、あまり意味がない。
それどころか、お願い事をする人が増えれば増えるほど、神様仏様は多忙になるから、俺の願い事が後回しにされかねない。
それは、是非とも避けたい。
でも、誰かは言っていた。
「人と言う字は支え合ってできている」と。
人は一人では生きられない。
ならば、初の詣に一人で行く理由が一体どこにあると言うのだろうか。
俺には分からない。

 

聞けば、初詣では甘酒を飲んだりおみくじを引いたりするようだ。
うずうずする。
それらをやりたくて。
うずうずする。
それを気の知れた友達と楽しめたらどんなに良いだろう。
最高の年明けだ。
いや、気の知れた友達などというケチなことは言わない。
一緒に行くのが好きな人であったら、どんなに楽しいことだろう。
想像するとたいへん愉快な気持ちになった。
好きな人と甘酒を「あちち」と飲み、おみくじを引いては「きゃはは」と笑い合う。
初詣のあとの残り360日くらいをすっ飛ばして、またすぐに次の初詣をしたいと思うほどだ。

 

さて、準備は万端だ。
買ったばかりの「ウルトラライトダウン」を装着して、財布にはピン札の1000円を忍ばせている。
ほぼ完璧な装備と言っても過言ではない。
今すぐにでも初詣に行ける。
あとは、正座をしながら構えているケータイで、メッセージを送るだけだ。
好きな人に。

だがしかし、俺には一つの懸念があった。
好きな人がもうすでに初詣を済ませてしまっているのではないかということだ。
済ませているのに、付き合ってもらうのはとても悪い気がする。
でも、「あけおめ!初詣はもう済ませた!?」なんていう、誘っているのがバレバレな事は言いたくない。
なるべくもっと自然に聞きたい。
そう、それはまるで忍術のような、「初詣の事を聞いているのに、初詣の事を聞かれているような気が全くしない聞き方」だ!!
俺は頭を抱えた。
そんなことは可能なんだろうか。

しばらく悩んだあと、稲妻のごとく、アイデアが脳みそを突き刺した。
そして俺はすぐにメッセージを入力して送信した。
送信されたメッセージが画面に追加される。

 

「あけおめ!今年もよろしくね!ところで今年はもうスーパーライトダウン買ったかな?」

 

完璧だ。
初詣に行っているならすでに「スーパーライトダウン」を買っている可能性が高い。
我ながら名案だ。
とりあえず、返信を待つ。
全てはそれからだ。

 

 

「初の詣へ、君と参りたい」-4-
2013.1.4

 


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初の詣へ、君と参りたい4