「初の詣へ、君と参りたい」

 

6

朝から出掛けた。
結局、メッセージの返事は来なかった。
だから、一人だ。
寒い。
買ったばかりのホットコーヒーもあっという間にぬるくなった。
これだから冬は好きになれない。
もし「スーパーライトダウン」を着ていなかったらと思うとぞっとする。
俺は年始早々に凍えて「冬の外恐怖症」という世にも恐ろしい病にかかる。
そして家から出れなくなり、春になるまでそこで過ごすことになっただろう。
そう考えると、ユナクロの功績はでかい。
では、去年までどうしてたかって?
おいおい、俺は過去にはとらわれない主義だ。
去年の事なんて、12月31日23時59分58秒には綺麗さっぱり忘れてしまった。

 

人混みは避けたかったが、人生初の詣だ。
いろいろと面倒に思わずに、有名な神社に行くことにした。
もうそろそろ初詣の時期も終わりかと思っていたが、電車の中には「スーパーライトダウン」を着ている人たちがちらほらいたから安心した。
だが、その人たちのほとんどがこれから初詣に行くのかと思うと自然にため息が出た。

自分なりに早めに出てきたつもりであったが、社は混んでいた。
とりあえず、慣れた振りをして参拝の列に並んだ。
しかしながら、人々の初詣に掛ける情熱は凄まじいな。
感心した。
感心したのでこれを「初詣パッション」と名付ける。
この「初詣パッション」を活かして発電でもできないものだろうか。
並んでいるとき、ノーベル賞規模の思案をしていたが中々良い案が思い付かなかった。
思案にも飽きて周りを見渡すと、甘酒の紙コップを持っている者や、おみくじで一喜一憂している者がいた。
俺も早く飲みたいし、引きたい。

 

「もう帰ろうか」と思うほど、参拝者の列は進まなかった。
みんな願い事をいくつしているんだ。
俺の願い事はたったひとつだから、先にさせて欲しい。
そんな風にイライラしながら待った。
好きな人と来ていればイライラすることも無かっただろうな。
そう思うと、寒さが身に染みた。

 

やがて俺の番がやって来た。
一気に複数人参拝する方式だ。
混んでいるのだから仕方ない。
あぁ、初めての詣。
ドキドキしながら、ピン札の1000円を投げ銭、拍手をして頭を下げて、願い事をした。
一瞬だった。
スーパーライトダウンのおかげで、とてもスムーズな参拝ができたのだけど・・・。
こんなものか。
多少の拍子抜け感は否めなかった。
それもきっと一人のせいである。
悲しくなるので、これ以上考えるのはやめよう。
さて、甘酒だ!おみくじだ!と気持ちを切り替えたその時、隣で参拝していた人に肩を叩かれた。
そちらを向く。
初の詣に緊張して気づかなかったが、好きな人だった。

 

「偶然ねぇ、一人?」
一緒に祭壇から降りながら彼女は言った。
「あ、あぁ。」
そう答えた俺の心は楽し気にダンスをしている。
完全に浮かれている。
「私も、一人。この間、メッセージ返さなくてごめん」
俺は浮かれているので「メッセージ?そんなのどうでも良いよ!」と言った。
本当はかなりのダメージを受けていたのに。
「ところで、何を願ったの?あ、でもこういうのって言っちゃうと叶わなくなるんだよね?」
お嬢さん、それを聞いてしまうのか。
まずは君の願い事を聞かせてもらいたい!!
しかし、俺は満を持して言ってしまうのだった。
ふふふ。
「実はね、『初の詣へ、君と参りたい』と願ったんだ。」
どや顔の俺を見て彼女は「え?それだけ?勿体ない!!」と言った。
もっと触れるべきところがあるだろう!!
そう思ったが、完全に無視だったのでなんだか、本当に勿体ないことをしたような気がしてきた。
しかしながら、今年は好きな人との参拝を諦めていたので、来年のための願い事だったけれど結果的にはナイスだ。
神様もニクいことをするもんだ。

 

初の詣に来て分かったことが二つある。
スーパーライトダウンはやっぱり暖かいし、キレる参拝ができるということ。
そして神様は案外、仕事が早いということだ。

 

 

おわり

「初の詣へ、君と参りたい」-6-
2013.1.6

 


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初の詣へ、君と参りたい6