マリー

 

21

授業中だった。
いつもの教室といつもの先生。
いつもの黒板といつもの教科書。
辛うじて学校に来たブサイくんは、そこでただ呼吸だけを繰り返していた。
昨日、マリーは見つからなかった。
その事実が、ブサイくんから何もかもを奪っていたのだった。
「どこに行ったのだろうか?」
その問いを頭の中で何度繰り返したか分からない。
カラオケボックスの受付の文具入れや、そこで働く人のポケットまで見させてもらった。
自分の鞄の中も何度も確認したし、ズボンのポケットには穴を開けてまで確認した。
それでも、マリーは見つからなかった。
悲しさに暮れて昨晩は眠ることができなかった。

 

虚ろな目をして座っているブサイくんを先生は注意した。
「ブサイ!具合悪いのか!?そうじゃなければ、せめてノートぐらい取りなさい。もうすぐテストだぞ」
ブサイくんは、頷くこともせず閉じていたノートを開いた。
何ページかめくる。
授業で学んだ事が書いてある。
でも、これが何だ?
こんなのが分かっていたって、マリーに会うことはできないじゃないか。
ブサイくんは、なんだか、笑えてきた。
でも、その時だった。
あるページがブサイくんの目に止まった。
それは、授業中に黒板を写したものではなく、まだマリーがいなくなる前に書いた、マリーへ宛てた詞だった。
ブサイくんは、それを読んで泣きそうになる。
いや、むしろ、涙の一滴や二滴は溢れていたに違いない。
そして、そーっと後ろを振り返り、その姿をチラ見しているカワイちゃん。
彼女が着ているブレザーのポケットにはマリーが。
しかし、これは悲劇ではない。
ただの「上手くいっていない恋」である。
よくある話だ。
この、よくある話はあと二回続く。
恋はどこまで無慈悲なのか気になるところである。

 

 

「マリー」-21-
2013.6.28


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マリー 21
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