マリー

 

17

ブサイくんは幸せの絶頂だった。
遂にマリーを手にしたのだ。
用意していたMOMOの消しゴムとすり替えてから、制服のブレザーのポケットに忍ばせた。
こんなに簡単で良いのか?と疑問に思うほど、簡単にすり替えることができた。
でも、そんな疑問はすぐに消え去り、ブサイくんの頭はマリーを手に入れたという喜びから溢れるエンドルフィンで満たされていた。
「ここで、おとなしく待ってておくれよマリー」
ブサイくんは心の中で優しく呟いた。

 

カワイちゃんは、依然としてブサイくんとの心の距離を埋めようとしている。
それは、主に言葉攻めであるが、以下の通りである。
「昨日のあのドラマ見た?」
「今度、あの映画やるよねぇ」
「音楽は何聞くの?」
「てか、Facebookのあの人の写真笑えるよね!」
「新しいケータイ欲しいんだよねぇ」
などなどだ。
しかしながら、ブサイくんはそれらに対して全て「うん」で応じた。
そして、ブレザーのポケットに手を入れては、大人しくしているマリーを撫でるのだった。

カワイちゃんは、そんなブサイくんの態度にちっとも違和感を覚えていない。
なぜなら、カワイちゃんも舞い上がってしまっているからだ。
そして、遂にあの言葉を言ってしまう。
「ね、ねぇ、ブサイくんって、‥‥好きな人いるの?」
「うん」
「え?本当!?‥‥うちのクラス?」
「うん」
「えー!!!! 誰!?あ、もしかして、私!? なわけない‥‥」
「うん」
「え?」
「うん」
「私?」
「うん」
「嘘‥‥。私も、ブサイくんのこと‥好き」
「うん」
「つ、付き合う?」
「うん‥‥うん?」
そこでブサイくんは、マリーを撫でていた手を止めて、カワイちゃんを見る。
頬を赤らめて、伏し目がちなカワイちゃん。
目が点のブサイくん。
こうして、二人のお付き合いは始まるのでした。

つまり、次回は、「私と消しゴム、どっちが大事なの!?」をお送りする予定です。

 

 

「マリー」-17-
2013.6.24


トンボ鉛筆 モノ消しゴム PE-01

マリー 17
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