「で、これから君はどーすんの?」

 

4

腹減ったなう。
僕は川へ洗濯に行く前に腹ごしらえをすることにした。
偶然なう。
ちょうど歩いていた国道沿いに牛丼屋を発見。
入るか入らないか、道端に咲いていた雑草を引き抜き草占いで決めるなう。
入る。
入らない。
入る。
はい、決定。
入る。
僕はスキップで牛丼屋との距離を詰めるなう。
ディランのサングラスが顔の上で揺れるのが気になったけれど、気にしない。
ガラス張りのせいで外から店内が丸見え。
深夜だからか知らないけれど、信じられないくらい暇そうだなう。

 

店に入ると「いらっしゃいませー!」と威勢の良いオヤジの声が飛んできた。
僕はここで分かってしまう、なーう。
このオヤジ、「いらっしゃいませ」の「ませ」の部分に価値を見いだすタイプの人間だな、と。
「いらっしゃい」の部分は完全に力を抜いてやがる、つまり流してやがる、しかし、僕はラッキーこの上ない。
なぜなら、このタイプの人間は往々にしてサービス精神が旺盛だからだ、というのは僕調べ。
オヤジが水を持ってやって来た。
沖縄人。
多分、オヤジ=沖縄人なう。
腕毛濃いというか、色黒いというか、なんというか、そういうような表現しかできないくらい、島人だった。
あのボクシング漫画でいうところのシマブクロみたいなヤツだ。
とりあえず、僕は牛丼を1つ頼む。
「牛丼ですね。ありがとうございますー!」
僕はここで分かってしまう、なーう。
このオヤジ、「ありがとうございます」の「ます」に価値を見いだすタイプの人間だな、と。
「ありがとう」の部分は完全に力を抜いてやがる、つまり流してやがる、しかし、僕はラッキーこの上ない。
なぜなら、このタイプの人間は往々にしてサービス精神が旺盛だからだ、というのは僕調べ。
オヤジが牛丼を持って来た。
「はい、牛丼です。ごゆっくりどうぞー!」
僕はここで分かってしまう、なーう。
このオヤジ、「ごゆっくりどうぞ」の「ぞ」に価値を・・・

 

御託はいい、食えば分かる。

 

急にそんな言葉を思い出したから僕は牛丼に箸を付けた。
箸を付けてガツガツと食べる振りをした。
ガツガツなう。
モグモグなう。
っていう振り振り。
ガツガツなう。
モグモグなう。
っていう振り振り。
それを20分くらい続けていると、オヤジがそれを悟ったらしいなう。
僕の目の前に立つとオヤジは言った。
「あんた、それ、食ってないじゃないか!舐めてんのか?」
僕はオヤジの顔を見上げる。
無言で見上げるなう。
ディランのサングラスに似たサングラス越しにオヤジを見る。
そう!
忘れちゃいけないよ!
僕はイカしたグラサンを掛けてるんだよ!
だから言ってやったよなう。
「マジ、マジで、旨いっすこれ」
オヤジは何も言わないで僕を見てる。
そりゃそうだよ。
だって、僕はオヤジが丹精込めて作った牛丼をガツガツ食べる振りして、さらにそれを「旨い」なんて言うし、しかもイカしたグラサン掛けているんだもの。
そりゃそうだよ。
このグラサン欲しくなるよ。
黙っちゃうよなう。
だから僕は言ってあげたんだ。
ナイスアドバイス、なーう。
グラサンを左手で指差して、「あ、これ、箱にスマイルで売ってますよ」って。
そしたらオヤジがち切れなう。
長いこと色々言われた。
その挙げ句オヤジは言う。

 

「で、お前はこれからどーすんだよ!?あぁ!?」

 

僕は3分前から考えていた事を口にすることにするなう。
「とりあえず、旨い牛丼食ってお腹一杯過ぎるんで、外、歩きますわ」
オヤジ、それ聞いてまたがち切れなう。
それは放っておいて、僕は店からスキップで出ちゃう、なーう。

 

 

「で、これから君はどーすんの?」-4-
2013.11.2

で、これから君はどーすんの? 4