「で、これから君はどーすんの?」

 

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僕は大きな国道から脇道に入って、住宅地を歩いた。
夜明け前の外はいくらか気温が低い。
パーカーだけだと少しばかり寒く感じるなう。
今さらになって、あの温かい牛丼を食べれば良かったと後悔なう。
今後は「腹は減っても戦が無いので、食べる必要はない」という考えを捨てることにしよう。
それにしても、静かだなう。
僕の密かな足音がぐっと響いている。
ありきたりだけれど、世界に僕しかいないんじゃないかって思った時に新聞配達のチャリを見掛ける。
なんだよ、いるじゃんなう。
でも明らかに静かなその空間を歩きながら、僕は思い出す。
ほんの数時間前にコンビニエンスストアのバイト辞めてベンチャー企業「株式会社ニート」の帰宅部に配属になった訳だけど、そのついでに目玉焼き8個作ってそれを食べる振りをした訳だけど、ホトトギさんと華麗なるSEXを決めたあとにその控えめなおっぱいにアディオスした訳だけど、それで街を歩いていたら知らない場所に来ていて「夜中の散歩婆さん」に出会ってお互いの目的を確認し合う訳だけど、僕はその約束を果たしに川へ洗濯に行く前に腹ごしらえをしに牛丼屋へ行く訳だけど、そこの店員は「いらっしゃいませ」の「ませ」に価値を見いだしているタイプの人間でそいつが作った牛丼をひたすら食べる振りしていたら怒られた訳だけど、僕はスキップで牛丼屋を出る訳だけど、そのあと川の場所聞くために交番に行ったら変なギャルに絡まれておまけに川がないでやんのこの街な訳だけど、外では夜明け前の匂いが濃くなってきた訳だけど、僕は、どーなるんだろうか、このあと。
なんとなく空を見上げるなう。
サングラス越しでも分かるくらい、着々と夜明けだ。
もう濃い青の時代は終わりだなう。
唯一知っているオリオン座さえ探せない。

それでも僕は歩いた。
だってここがどこだか分からないし、帰るに帰れないのだものなう。
歩くしかない。
僕の過去に何があったか知らないが。
僕の未来に何があるのか知らないが。
歩くしかない、なーう。

 

そう思っていたらいつの間にか10キロくらい歩いていて川発見なう!
マジ発見、なう。
ディスカバリーなう。
僕は急いで川に近寄る。
これで洗濯ができる。
川は住宅地の真ん中を流れていて、やたら広い幅は7メートル20センチくらいでも深さは50センチ2ミリくらい。
その割りに堤防の深さは6メートルジャストくらいなアンバランス。
俗に言う石神井川的なアプローチ。
でも、只今アンバランス街道まっしぐらな僕が洗濯をするには打ってつけの川なのです。
川の水も透明で、あれはきっときれいな水なのです。
アスファルトビルディングを浄化しちゃうくいきれいな水なのです。
天使を辞めた彼が探しているきれいな水なのです。
僕は手すりを乗り越えて、堤防に備え付けてある梯子に足を掛けた。
その時、通りすがりのカラスが夜明けを伝える。
そいつはこう言った気がした。

 

「で、これから君はどーすんの?」

 

僕は誰に言うにでもなしに言ってみる。
「それはもう分からないけれど、やらなきゃいけない洗濯をやってみるよ」

 

 

「で、これから君はどーすんの?」-6-
2013.11.4

で、これから君はどーすんの? 6