「で、これから君はどーすんの?」

 

7

川で洗濯なう。
というか、風呂?
川に座って腰まで全部浸かっちゃってるこの状況は風呂?
なう?
いいえ、風呂ではありません。
なぜなら、寒いもの。
川、冷たいんだもの。
でも水風呂ってのもあるしね、風呂と言えば風呂なんだろうか?
なう?
いいえ、風呂ではありません。
なぜならここは川だからです。
僕は「なぜならここは川だからです」と呟きながら、空を見上げる。
あぁ、空がだいぶ明るくなってきたなう。
高い堤防に挟まれた空はいつもより狭く感じるなう。
空から目線をずらすと、堤防にある柵越しに人影が見えた。
こちら側を向いている。
柵ギリギリまで近付いて、そいつは一本の細い水を川へ注いだ。
小便、なう。
その落差、6メートルジャスト。
もう立派な滝である。
以外と長い時間注がれる滝を僕は見ていた。
キラキラと綺麗だなう。
しかし、気付いた。
「ふぁ!?」って感じで気付いたなう。
僕が腰まで使っている川にそれは注がれているんだ。
ふざけやがってなう。
僕は勢い良く立つと、堤防に備え付けられている梯子を昇った。
ジーンズが濡れているせいで動きにくいなう。
でも、がつがつ昇るなう。
そして、最後に柵越えてウェイ!
アスファルトの上に立つ僕。
寒くてがちがち膝が笑っているなう。
少し離れた所で、まだヤツは柵から滝を流している。
「この石っころめ!」
なぜだか僕はそう叫んだなう。
なせだろうか。
なうだろうか。
どうでもいい、なーう。
僕はそいつのところへ走ると頭を叩いた。
しかしびっくり。
そいつが顔を向けてきてびっくり。
なんと、そいつ、昨日まで一緒に働いていた先輩フリーターなう!
びっくりついでにもう一度頭を叩いておく。
先輩フリーター「ふぁっ!?」ってなったけれど手が離せない模様。
どんだけ長いんだよなう。
長いついでにもう一度頭を叩いておく。
先輩フリーターはわなわな震えて「ごめ、ごめんなさい!」と言った。
そこで僕は気付いた。
そうか。
僕は今、ディランのサングラスに似たサングラスを掛けている訳で、僕の素顔は隠されている訳で、おまけに川から上がってきた訳で、下半身びしょびしょな訳で、相当怪しい人間なうな訳で、先輩フリーターはビビってる訳だねなう。
先輩フリーターはやっとこさ滝の生産をやめて、ズボンのチャックを上げる。
その間も僕は先輩フリーターの頭を叩いておく。
「ハゥ ドゥ ユー フィール!?」って叫びながら叩いておく。
「あ!あ!ごめ、ごめん、ごめんなさい!」
先輩フリーターはそう言うと僕から逃げるように走っていったなう。
僕はそこに取り残された、なーう。

 

太陽が見えないところで顔を出したようだ。
空に少しだけオレンジが混ざってるなう。
でもまだ、歩いている人はいない。
新聞配達の連中もいない。
僕はアスファルトコンクリートに寝転んだ。
なんだか暖かかった。
川で冷えた体には、それはもう暖かかったなう。
毎日のように接していたアスファルトコンクリート。
なのに僕は気付かなかったよ、そのぬくもりに。
そこで声が聴こえるなう。
「ハゥ ドゥ ユー フィール?」
僕はそれを誰の声か知っているなう。
でも、思い出せない。
思い出せない代わりに僕はなんだか、ホトトギさんの控えめなおっぱいが恋しくなったなう。
だから電話したなう。
そうだなう。
そんなんだなう。
携帯は持っていたんだよ。
ずっと右手に握ってた。
忘れていた訳じゃない。
もはや身体の一部なのさ、なーう。

「もしもし?」
「もしもし?ホトトギさん、色々あって僕はコンクリートアスファルトか暖かいってことに気付いたよ」
「うん。全部知っているわよ」
「え?何で?」
「だって、ずっと君のツイート見ていたもの」
「・・・なう」
「で、これから君はどーすんの?」

 

 

おわり

「で、これから君はどーすんの?」-7-
2013.11.5

で、これから君はどーすんの? 7