「で、これから君はどーすんの?」

 

5

国道沿いをスキップなう。
なんだか、夜明けの匂いがする。
もう夜明けなんだろか。
おや、そうそう。
川に行かなければならないね。
だって、婆さんを山に芝刈りに行かせているんだもの。
僕だって川に洗濯に行かなきゃならない。
年功序列だもの。
そうしなきゃ、ホトトギさんの控えめなおっぱいだって泣くってもんだなう。
だけど、なかなか国道沿いには川がない。
川は何処?
そもそもここは知らない土地だから川があるかどうかも分からないなう。
困ったときはお巡りさん!
という訳で交番を探すし、偶然なことに交番そこにあるし、スキップでそこへの距離詰めるし、交番の前に立つし、そしたら交番には誰もいねぇし、なーう!

 

「パトロール中」の札が出ている。
仕方ないから僕は中で待つことにした。
だって、川の場所の手がかりは他にないもの。
僕はディランのサングラスに似たサングラスを掛けたまま、狭い交番内に貼られているポスターやら何やらを見て時間を潰した、その時なう。
見つけてしまったなう。
机にここいら周辺の地図が広げてあるのを。
僕は机に寄ってそれを眺める。
こちら側、つまり入り口側からだと見にくい。
僕は本当ならば警察官が座る側の方に回り込んで地図を見た。
ふむふむ。
ふむふむ。
ふむふむ。
なうなう。
ふむふむ。
ていうか、現在地どこ?
全然分からない。
やっぱり警察官が戻ってくるのを待つことにしようと思った時にエニウェイ。
「すみませーん」の声がして、入り口側を見ると一人の女が立っていたなう。
ギャルだ。
金髪ギャルなう。
ギャルが交番に何の用だ。
「今、大丈夫ですか?てか、あの、警察ですよね?」
ギャルは僕を見てそんな事を言う。
僕は頷いてから言う。
「ここが警察じゃなかったら、他にどこが警察なんだね」
「・・・はぁ、あの、自転車盗まれちゃって」
女は話し始めるなう。
僕にどうしろと言うのだろうか。
「被害届出したいんですけど」
その時僕は閃いた。
我ながら天才的な閃き、なーう。
この閃きにはホトトギさんの控えめなおっぱいも驚きだ。
「そうですか、では、まず、いくつか質問なんですが、」
「はい」
「あなたは、この辺の地形に詳しいですか?」
「は?」
「いや、地元の人かどうかっていうことです」
「あ、地元ですけど」
「そうですか。じゃあ、ちょっとこの地図見てもらってもいいですか?」
僕は机の上に広がる地図を指すなう。
「はい」
「自転車はどの辺に停めてあったのですか?」
「えーと、ここです。この駅の辺りです」
「ほほう。ちなみに、今いるこの交番はどこですか?」
「え?」
「いや、失礼かもしれませんがね、ちゃんと分かってるのかなと思いましてね。ほんと、失礼は承知なんですが」
「は、はぁ・・・ここです」
「正解!君がそう言うなら正解だ!では、次の問題です。この町に川はありますか!?」
「え?」
「川だよ、川!」
「えーと、ありません」
「ふぁっ!?」
衝撃、なーう。
ボディブローを浴びた気分。
川が無いだと?
じゃあ、僕はどこで洗濯をしたらいいんだ。
「あのー、川が何か?」
ギャルは言う。
僕は途端に面倒になっていたなう。
「さぁ?僕にもさっぱりです」
「え ?…一体、何なんですか?」
ギャルは語気を強めて言う。
僕はとても面倒になっていたなう。
「さぁ?僕にもさっぱりです」
「は!?あんたねぇ!」
ギャルは怒りだす。
僕は席を立つなう。
ギャルは僕を見る。
僕は机の脇をすり抜けるなう。
ギャルは言う。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
僕はお構い無しで出口に向かうなう。
ギャルは僕のパーカーの裾を掴む。
僕は振り返ってギャルを見るなう。
ついでにサングラスも外してやる、なーう。
ギャルと目が合う。
そのまま沈黙。
それを破ったのはギャル。

 

「で、これからあんたどーすんのよ」

 

僕は言う。
ディランのサングラスに似てるサングラスを掛け直して、言う。
「こんなね、川の無い町になんか用はないんでね、おいとましますよ」
パーカーの裾を掴むギャルの手を振り払うと、ササッと交番から立ち去るなう。
ちょっと歩いた所で、自転車に乗った警察官とすれ違う。
僕は声を掛けるなう。
「ご苦労さんでごわす」
警察官は一瞬振り向くが行ってしまった。
夜明けの匂いが益々、濃くなっていく、なーう。

 

 

「で、これから君はどーすんの?」-5-
2013.11.3

で、これから君はどーすんの? 5