「ロール」

 

ロール1

朝は起きたから始まるんじゃない。
ガラガラガラとトイレットペーパーを手に巻いてから始まる。
僕は寝惚けた頭を抱えて用を足す。
もちろん大だ。
大の方だ。
そしてガラガラガラとトイレットペーパーを巻き取る。
そこに書いてある文字を読んでから、僕の朝は始まる。
『火は水で消えると思うな』
今日はそう書いてある。
僕はそれを復唱する。
よし、朝が来た。
僕の寝惚けた頭は次第に目を覚ます。

 

そして10分後には自転車をかっ飛ばす。
バイトに遅れちゃうから。
車線変更を駆使してなるべくブレーキをかけないように図る。
だけど途中で大袈裟にブレーキを握る。
コンビニに寄るためだ。
どんなに急いでいてもこのコンビニには寄る。
そして、缶コーヒーを一本レジへ持っていく。
ブラック無糖。
ファッキン、クールだぜ。
で、ぜぇぜぇ言うのを堪えながら、レジで待つアキホちゃんに渡す。
「おはようございまーす。今日も遅刻ですか?」
「え?んなことないよ。ヨユーだよ。ヨユー」
そう言いながらちらりと左手の腕時計を見るとファ!?
もうね、やばい。
時間やばい。
「120円です」
財布から200円出すと「あのね、釣りはいらないなから、アキホちゃんにあげちゃう!じゃあ、また明日!・・・あ、そうそう、今日は『火は水で消えると思うな』だよ!よろしく」と言う。
それから、ヨユーたっぷりで出口に向かう。
出口を出てから振り返ってもう一度アキホちゃんに手を挙げてみせる。
アキホちゃんはにっこり笑う。
そっからはくそダッシュ。
くそダッシュで自転車をぶっ漕ぐ。
ふざけんなっつーの!!!
そんな感じで赤信号にキレながら自転車を漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ。
漕いだ先の4分遅刻で、バイト先にイン。
街の寂れたトイレットペーパー屋。
木造建築的な正方形の小さい店だ。
カウンターは二人立つと一杯。
そこに同僚はもう立っていた。
当たり前だ。
こっちが遅刻してるんだから。
「4分か。もうちょっと攻めろよなぁ。6時間遅刻とかさぁ」
そう言う同僚はデブでメガネだ。
そいつにさっき買ったコーヒーをやる。
缶の回りをパーカーで拭いてから。
こいつとアキホちゃんを間接的に触れさせるわけにはいかないからだ。
ブラック無糖。
「また無糖かよ。嫌みだろ嫌み。まぁ、飲むけどさ」
そう言うと早速飲んだ、そいつの名前はトイチ。
この店には僕とトイチしか働いていない。
年齢は二つ上らしいがあまり関係ない。
トイチはあとから入ってきた。
だから僕の方が先輩だしね。

ここの店主は趣味でこの店をやっていて、僕たちは店番にしか過ぎないわけだけど意外と時給が良いからサイコーだ。
たまに営業に行かなきゃならないのがネックだけど、客もそんなに来ないから基本的にはくそ暇。
で、夜7時までここにいれば好きな事をやっていて良い。
マジでサイコー。
つーわけで、今日もくそ暇な一日が始まるわけだ。

 

 

「ロール」-1-
2013.11.16

ロール 1
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