『ある町のgirls』

3

 

b

袋入りの丸いcandy。
彼女はその袋を開けようとしている。
最近そういった袋の開け方を覚えたばかりだから、自分でやりたくて仕方ないんだろ。
だけど、開けにくい。
彼女は嫌いなstraw hatを被っていることも忘れて、その袋を開けることに夢中になっている。
母親と、買い物に行く途中だ。
夏の長い夕方。
歩き疲れて、駄々をこね始めた彼女に母親がそのcandyをあげたわけだ。
「開かない?開けようか?」
母親はそうやって、彼女の手伝いをしようとするけれど、彼女は首を横に振る。
そこまで大きく振ると脳みそが回転するぞと思うくらいに首を振る。
自分で開けて、自分で食べたいんだろう。
そういう年頃さ。
そうそう、彼女は「何歳?」と尋ねられると利き手の右手を思い切り開く。
つまり、5歳だ。
うん。
よく生きた方だ。
でもこれからもまだ生きるんだろ、humanってやつは。
やめておけばいいのに。
そのアメ玉の袋だって、もう母親に開けてもらったらいいだろ。
でも、諦めないんだろ、humanってやつは。
彼女はとうとう歯を使って開けようとしている。
母親は「かしてごらん」と言って手を差し伸べる。
でも、彼女と来たら「んーん」と唸ってそれに応じなかった。
彼女は精一杯の力で、袋を噛んで引っ張っている。
それでもなかなか開かずに、彼女の口には更に力がこもる。
そのうちに、袋は開いた。
開いたけど、精一杯の力で思い切り開けたせいで、その拍子に中のアメ玉が飛んでいってしまった。
蝉の音に混じって「あ!」と弱く叫ぶ彼女の声がした。
アメは道の脇の草むらの中へ。
探すのはもう無理だ。
彼女はどうすることもできずにぐずった。
それに気付いた母親は「どーしたの?」と聞く。
ただ涙ぐむだけの彼女。
母親は彼女が右手にぐっと握りしめているアメ玉の袋を見て、悟った。
「あらら、落としたの?」
そう聞かれた彼女は、こくりと頷く。
「仕方ないなぁ。お母さん、一個しか持ってないよ」
母親はしゃがんで彼女の顔を覗き込むと、そう言いながらタオルで彼女の汗と涙を拭いた。
そのあとで、立ち上がると「スーパーマーケットで帰ってあげるから、早く行こ?」と、彼女に手を差し出した。
彼女は少し躊躇ったあと、母親のその手を掴んだ。
二人は歩き出す。
「夜はサンドウィッチにしようか?」
しばらく歩いてから母親がそう言うと、彼女は飛んでいったアメ玉のことなんか忘れて、今日一番の笑顔で「うん!」と喜んだ。
好きなんだ、彼女。
サンドウィッチとかそういうものが。
目の前の欲には勝てやしないのさ。
あのアメ玉はどこかで、彼女に食べられなかったことを悲しんでいるに違いないというのに。
彼女はもうtomatoやsmoke turkeyを挟んだ柔らかいパンにうつつを抜かしている。
でも、そんなもんだ。
だって、彼女はまたしても嫌いなstraw hatを被っていることを忘れているくらいなんだから。

 

g

つかれた。
あるくのつかれた。
ママは「もうおねえさんだから」ってだっこしてくれない。
きらいなぼうしもかぶらなきゃいけないし、やだ。
つかれた。
でも、ママがアメくれた。
いつもたべてる、すきなアメくれた。
おれんじのやつ。
「できる?」ってママはいったけど、できるよ。
アメのふくろくらいあけられるもん。
でも、なかなかあけられなかった。
あるきながらやってるからだ。
ママがてくてくとまってくれないから。
だからあけられない。
てがすべってうまくできないから、はでやる。
ぐってかんで、ひっぱった。
だめ。
あかない。
ままが「かしてごらん」っていうけど、かさない。
ひとりでできるもん。
ぐって、ちからいれて。
はでかんだふくろをひっぱる。

!!!!

あいた!
っておもったけど、そのときアメがとんでった。
くさむらにとんでった。
すきな、おれんじのアメが、バッタさんみたいにとんでった。
ママにやってもらえばよかったっておもったらわんわんなけなかった。
ママはスーパーマーケットでアメをかってくれるっていった。
でも、あのアメがたべたかった。
ママとてをつないであるいていたら、ママが「よるはサンドウィッチにしようか」っていった。

!!!!!!

サンドウィッチ!
サンドウィッチ、すき!
はやくサンドウィッチたべたい!
はやくスーパーマーケットに行こう!って、はしった。
ママは「まって、あんまりはしるとあせかくよ」っていった。
だいじょうぶ!
はやく!
はやく、サンドウィッチ!
あるくのがおそいママをおいてはしった。
ゆうやけ。
はやくしないと、ゆうやけもすぐにしずんで、よるになっちゃう!
そらをみたら、へんなのをみつけた。
へんなとびかたをする、とり。
はしるのをやめて、とりをみた。
ふつうのとりよりヒラヒラしてる。
おおきいちょうちょみたいなとびかた。
うしろからおいついたママが、「なにみてるの?」って。
「あのとり、へんなとびかたしてるの」
「あれはとりじゃないわよ」
「なに?」
「コウモリよ」
「コウモリ?」
 
 

 

つづく

『ある町のgirls』-3-
2014.8.22


カベンディッシュ キャンディージャー 300g

ある町のgirls 3
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