『ある町のgirls』

6

 

b

あの娘は、まだ小さい身体の割りには、それでも大きなdreamを持っている。
もうすぐ、生まれてから10周年というところ。
彼女は、忙しい。
schoolにて、学んだり、遊んだり、泣いたり、怒ったり、笑ったり、ケンカしたり、仲直りしたり、好きな男の子がいたり。
どちらかというと、元気な娘だろう。
今はまだ本を読むのも嫌いで、一番嫌いな授業はnational language。
「眠くなる」
彼女は友達にそういう感想を述べていたことがある。
そんな彼女が眠くならないで、尚且つ、嫌いな読書さえ我慢できてしまうことがある。
それは、彼女が両手を一杯に広げて抱えているdreamに関することだ。
彼女はdreamに関することならば何でも進んで行った。
調べたり、書き記したり、作ったり、失敗したり、成功したり、その反省点や成果や考察を、また書き記したり。
本当は高度なそのプロセスを、彼女はすでに実行できていた。
それほど、dreamに対する想いは本気というわけさ。
そして、それらのプロセスをすべて含めて彼女は「研究」と称していて、それは友達にも先生にも秘密だった。
知っているのは、彼女の母親だけだ。
なぜなら、その「研究」の一部である「実験」は、彼女の家で行われるわけで、母親の手を借りることが多いからだ。
彼女は一人でその実験を行うこともできるけれど、母親と一緒に行った方が上手くいくというわけさ。
そして、彼女は家で行った実験の成果を、やはり書き記す。
それらは母親に買ってもらった大学ノート、三冊分に及ぶ。
若いのに、よくやるもんだ。
そして、ついにその「研究」の成果を世に知らしめる時が来たわけだ。
それはschoolでの出来事で、つまりそう、先生はこう言ったわけだ。
「一週間後の国語の時間に、みなさんの将来の夢について発表してもらいますので、原稿用紙1枚以上、3枚以内にまとめてきてください」
そうして、彼女の手元にも原稿用紙が渡ってきた。
彼女は鼻息を荒くする。
嫌いなnational languageの宿題だけれど、「将来の夢」という言葉が彼女にやる気を起こさせた。
家に帰るとすぐに、原稿用紙の空白を埋める作業に取り掛かる。
彼女は今までみんなに秘密にしていた、自分のdreamとそれに対する熱い想いを書き記したのさ。
そんなdreamなんて、すぐに忘れてしまうのに。
一体、何の意味があるというのだろうか。
だけど、human。
そんなもんだろ。
大切なのは、大抵が「今」なのさ。
ほら、見てみなよ、原稿用紙に向かう彼女の目、キラキラしてるだろ?
なんていう比喩表現は、彼女の未来を変えることはできない。

 

g

国語の時間は詰まらない。
それがよりによって5時間目にあるなんて、最悪。
早く帰りたい。
だって、研究があるんだもん!
お母さんとそのための材料を買いに行かなきゃいけない。
うん。
今日はHLT!
あー、早く帰りたい。
そういう時に限って、時計の針は進んでくれないんだもん。
それでも、ノートに今日の研究でやることをメモしていたら、夢中になってしまっていて、気付けばもうそろそろベルの鳴る時間。
先生は授業を終わらせる準備をする。
「じゃあ、今日の宿題は…そうそう、一週間後の国語の時間に、みなさんの将来の夢について発表してもらいますので、原稿用紙1枚以上、3枚以内にまとめてきてください」
それを聞いたみんなは、「えー!!」と言う。
作文が嫌いな人は多い。
私も全然好きじゃない。
いつもだったら、みんなと一緒に「えー!!」と言っているだろう。
でも、書くことが「将来の夢」なら別だわ。
胸が高鳴ったくらい。
だって、私には揺るぎない将来の夢があって、それはみんなに秘密にしていたけれど、今までの成果を存分に発表できるんだもん。
きっと、みんな驚くに違いない!

みんなと「バイバイ」してからは、すぐに帰った。
早く帰って、やらなきゃいけないことがいっぱいあるんだもん。
家に着くと、「ただいまー!」と言いながら洗面所に走って手を洗った。
ソファで雑誌を読んでいたお母さんに「お買いもの、まだ行かない?」と聞く。
「うーん、あと1時間くらいしたら行こうと思ったけど、行く?」
「ううん。まだ行かない!宿題をやらなくちゃいけないの!」
「あら、そうなの。じゃあ、行く時になったら声掛けるね」
お母さんのその言葉に「分かった!」と返事をして、すぐに机に向かった。
そう。
今日は研究の日だもの!
HLTを作る日!
この間の研究でBLTっていうサンドウィッチがあることを知ってから、「じゃあ、ベーコンじゃない、ハムでやると、HLTだよね。それも絶対おいしい!」と思ったの。
そして、それを実行するのが今日!
でも、まずは、作文を書かなくちゃ!
鞄から取り出した原稿用紙を机に広げる。
題名を「私の夢」として、早速書き始めると、止まらなかった。
こんなこと、今まで一回も無かったのに。
作文は嫌いだから。
でもだけど、やっぱり、夢のことになるとスラスラと書けた。
そして、あっという間に、最後の一行を書き終えた。
読み返してみたけれど、大丈夫。
私はぐーっと伸びをしながら、左側を見る。
奥にベランダがあって、窓から夕焼けの景色が見える。
眩しいから目を細めた。
あれ。
なんだろう?
ベランダに掛かっている物干し竿に何かがぶらさがっている。
逆行だから、見えない。
見ようとしていたら、「宿題終わった?そろそろ行くわよー」とお母さんの声が聞こえた。
私は「はーい」と返事をしながら、物干し竿にぶら下がっているそれを見ていた。
そして、なんとなく口走った。
「コウモリ?」

 

 

つづく

『ある町のgirls』-6-
2014.9.5


サンドイッチ教本


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ある町のgirls 6
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