『ゆめこに捧げるラブソング』

 

Song No.5

17歳のときた君は、暇さえあればギターを弾きます。
ギターを弾きながら、大学ノートに書いているのはゆめこに向けた歌の数々です。
それは日記のようなもので、毎日、一曲ずつ書きためています。
その大学ノートにゆめこ以外のことを歌っている歌はありません。
なぜなら、ときた君の持つ、ありとあらゆる想いはゆめこで満ちているからです。
でも、このことはゆめこには秘密にしているときた君です。
だって恥ずかしいからです。
でも彼はいつか歌うでしょう。
背中に背負っているギターを取り出して。
ゆめこに向かって歌うでしょう。
大学ノートに書きためた全ての歌を。

 

ときた君とゆめこは付き合ってしばらくしてから、一緒に学校に行って一緒に帰るようになりました。
朝、ときた君がゆめこの家の近くまで迎えに行って、自転車に二人乗りで学校に行くのです。
もちろん帰る時も、ときた君はゆめこを乗せて帰ります。
その時間が一番しあわせに思えたりもします。
ゆめこは、ときた君の自転車の荷台に座りますが、金属の荷台は固いし痛いし、冬になると冷たいです。
それを知っていたときた君は、自分の自転車の荷台にパンをモチーフにしたキャラクターが描かれた小さい座布団をくくりつけました。
ときた君は、優しいのです。
次の日の朝、それを見たゆめこは、奇跡的な感動をします。
本当は理由を分かっていたけれど「ときちゃん、これ、どーしたの?」と聞きました。
ときた君は、恥ずかしいから本当のことを言えません。
「ゆめこのおしりが当たってると、自転車の荷台が可哀想だろう。だからワンクッションおくためにだよ」と言いました。
それを聞いたゆめこは、微笑みながらとても小さい声で「ありがとう」と言いました。
ときた君は意味のない意地悪を言ったことを後悔して、ひとしきり反省しました。
そして、おもむろに背負っているギターを構えました。
「ゆめこ!!俺、歌いたい!!素直な気持ち、歌いたいよ!!!」
ときた君は、朝っぱらから住宅地で人目も憚らず歌います。
「聴いてください。ゆめこに捧げるラブソング」

 

ー『君を荷台に乗せているという喜びを10年後の僕は噛み締めることだろう』ー
詞 消しゴム
曲 消しゴム
(消しゴムはときた君のアーティスト名です。)

チキンの衝撃みたいに~♪
望遠鏡は担いでいない~♪
でもそれよりも~♪
重いような気もしないでもない君を~♪
荷台に乗せているよ~♪

いいえ 決して重くはない~♪
はい 重いのは僕の君への想いです~♪
もし負担なら~♪
捨ててくれて構わない~♪
僕は座布団を敷いて待っているから~♪
ふわふわふ~♪ ふわふわふ~♪
ザブトン!!!


率直に言おう~♪
できることなら その荷台になりたい~♪
だけど それは難しいみたいだから~♪
諦めるよ~♪

その代わりと言ってはなんだけど~♪
君のことは諦めなくても良いかな~♪
それが駄目なら~♪
荷台になることを諦めないよ~♪
二つにひとつさ~♪
だけど本当は~♪
むしろ僕は君が座る~♪
椅子になりたい!!
椅子になりたい!!
椅子にならせてくれ!!
椅子になりたい!!
Oh~Yeah Ah ha!!

※くりかえし

 

ときた君は歌い終えました。
ゆめこは奇跡的にも程があるほど感動しています。
「・・・ときちゃん」
「・・・ゆめこ」
二人は抱き合いました。

クリスマスは、もうすぐそこまできています。

 

 

『ゆめこに捧げるラブソング』
Song No.5   2012.12.23


チェブラーシカ クッション ハート

ゆめこに捧げるラブソング5