「基本的にヒーローは暇である」

 

9ヒマ

「向こうに着いたらハイスクールの制服とか着てもらいたいんだが、いいか?」
青色ブルーは空の上で桃色ピンクを口説いていた。
「えー?何でよ?着てどうするの?」
「写真撮って、向こうのアイドル好きに売ろうと思っている。遂に俺もプロデュース側に回る頃だ」
「えぇー。なによそれ。無理無理。グリーンにも聞いてよ」
まんざらでもなさそうな桃色ピンクにそう言われて、青色ブルーは桃色ピンクの向こうに座る緑色グリーンに聞いた。
「おい、良いだろ?」
「うーん。良いんじゃない?」
緑色グリーンが言うと、「えー!?」と桃色ピンクが声を上げた。
そんなぷりぷりと怒る桃色ピンクを緑色グリーンはとても優しい笑顔で見つめた。
そして言った。
「大丈夫だよ、桃ちゃん。僕が全部買い占めるから」
ずきゅーん!!
そんな効果音が響いたようだった。
桃色ピンクは感動して、青色ブルーはため息を吐いた。
そして、機内食が配られる。

 

赤色レッドはビールを飲んでいる。
最高だ。
最高すぎるよ。
赤色レッドは、自分の立てた作戦に惚れ惚れしていた。
「間違いなく、敵の肩透かしたるで!」
笑いながら呟いた。
その隣でおやっさん局長は、桃色ピンクにカメラを向けている。
少し離れた座席だから、ズームを駆使している。
あえて、隣の席は青色ブルーに譲った。
離れたところからの方が撮りたい放題だからだ。
「カッワイー」と呟きそうになったけれど堪えた。
堪えた代わりにオナラをした。
正義の心を日曜日に置いてきている赤色レッドに殴られた。

 

黄色イエローはトイレにいた。
ヒーローの権限で持ち込んだ蕎麦を食べていた。
一般人に持ち込みがバレると厄介だ。
だから、トイレで食べていた。
トイレと言う劣悪な環境下でも、旨すぎる蕎麦。
蕎麦は偉大だ。
しばらく席には戻れそうにない。
蕎麦となるべく長い時間を過ごしたい。

 

敵の下っ端は、座席でガタガタ震えていた。
さっきから「ヤバイ」しか口にしていない。
チケットを何度も確認するが、どう考えても「Hawaii」の文字は見当たらない。
ヒーローを監視するはずが、Hawaii行きではない飛行機に乗ってしまった。
偉い敵に怒られるのは目に見えてる。
もうNipponには帰りたくない。
いっそ、ハイ・ジャックでもして無理矢理Hawaiiに向かうか。
「・・・ダ、ダメだ。」
下っ端は弱々しく呟いた。
そんな力、下っ端には無い。
力の無い下っ端を乗せた飛行機は、伸び伸びと飛び続ける。
「はぁ」
下っ端はため息を吐いた。
着陸するまで待とう。
そう思ったとき、機内食が配られた。
そうだ。
「腹減り野郎は、下っ端以下」という格言がある。
まずは腹ごしらえだ。
下っ端は、機内食には手を付けなかった。
悪党の裁量で持ち込んだ蕎麦を取り出した。
幸い、隣の席の人は席を立っていた。
今のうちに食べてしまおう。
こんな最悪な状況下でも、旨すぎる蕎麦。
蕎麦は偉大だ。

 

 

「基本的にヒーローは暇である」
-9ヒマ-  2013.1.15


コスレンジャー 桃

基本的にヒーローは暇である9