「基本的にヒーローは暇である」
12ヒマ
「そろそろ、Nipponに帰らなければいけないなぁ」
緑色グリーンはそう思った。
Guamに着てから4日目の夜のことだ。
でも、この旅行の企画者である赤色レッドは何も言ってこない。
なんでだろう。
ギリギリまで楽しむ気なのだろうか。
「桃ちゃん、赤色レッドから帰りのチケットとかもらってる?」
同じ部屋にいる桃色ピンクに聞いてみたが、「ううん」という返事が返ってきた。
「そうかぁ」
なんとなく煮え切らなかったけれど、緑色グリーンは寝ることにした。
日中、たくさん遊んでいるから疲れている。
赤色レッドは、ホテルのバーにいた。
少し強めのお酒を飲んでいる。
アゴに手をついて、もう片方の手には帰りの航空券を持っている。
もうすぐ帰らなければ、日曜日がやってきてしまう。
でも、今回は敵の肩を透かしたい。
なんとしても帰るわけにはいかない。
しかし、日曜日がくれば、赤色レッドや他のメンバーも正義の心を取り戻して、どうにかしてNipponに帰ろうとするに違いない。
それだけは避けなければならない。
酔っている赤色レッドはそう思った。
そして、グラスを一気に傾けた。
空になったグラスをカウンターに置くと、手に持っていた帰りの航空券をビリビリに破いた。
クックック。
赤色レッドは不適に笑った。
ヒーローの見張り役として派遣された敵の下っ端は、Guamを満喫していた。
本部からの連絡は未だにない。
きっと、高尾山の標高について議論でもしているのだろう。
下っ端は、そんなことを思いながら、夜の浜辺に座ってここ数日を振り返った。
最初は飛行機を乗り違えてヒヤヒヤものだったが、ヒーローたちもそれに乗っていたとはとてもラッキーだった。
そして、まさかの黄色イエローと隣の席だ。
これもとんでもないチャンスだ。
しかも、「蕎麦好き」ということで一瞬にしてお近づきになれるなんて、もはや奇跡としか思えない。
他のメンバーとも仲良くなれている。
なんてラッキーなんだ!
・・・いや。
これは本当にラッキーなのか?
「ラッキー」なんていう小さい表現で終わらせていいのか?
もはやこれは、自分の実力なんじゃないのか?
・・・そうに違いない。
そうでなければ、こんなにたくさんの奇跡的なラッキーが続くわけがない!!
「僕は、何かしらの力を持ってる男だ!!」
そう叫んで、勢いよく立ち上がった。
「何を持っているんだ?」
急に後ろから声がした。
びっくりした。
しかし、この声には聞き覚えがある。
一気に血の気が引いた。
びくびくしながら後ろを振り向いた。
やはりそうだった。
そこには、アロハシャツを来た偉い敵が立っていた。
「基本的にヒーローは暇である」
-12ヒマ- 2013.1.18