「基本的にヒーローは暇である」
11ヒマ
Guamに着いてから、あっという間に時間が過ぎた。
赤色レッドは、常に酒を手離さなかった。
黄色イエローが飛行機で出会ったという、ひょろい男とも飲みに出掛けた。
なかなか話の分かるヤツで、上司について「上に立つものがMt.FUJIばかりにうつつを抜かすのは良くない!!」という独自の議論を展開していた。
なんだか笑える。
赤色レッドはたいへん有意義な時間を過ごした。
黄色イエローは、そのひょろい男と蕎麦巡りをした。
蕎麦を出している店は多くない。
すぐに巡り終わった。
だから当然2周目、3周目と回った。
蕎麦ばかり食べたが、ひょろい男は「蕎麦を食べると色々なプレッシャーから回避されるような気がします」と言った。
黄色イエローは想像した。
彼はきっと、とてつもない責任を負う職についているのだろう。
その点については、ヒーローも同じだ。
黄色イエローは彼の気持ちを少し理解したつもりで、蕎麦湯を分け与えた。
桃色ピンクは激怒した。
緑色グリーンが水着姿の女の子を、それとなく見ているからだ。
桃色ピンクのバディも負けていないが、そういう問題ではない。
問題は緑色グリーンの目線だ。
だけど、そこに居合わせたひょろい男が言った。
「桃色ピンクさんは幸せものですね」
不機嫌な桃色ピンクは「どこがよ!」と怒った。
「だって、そうやって嫉妬できる相手がいるんですもの」
桃色ピンクは、ふと冷静になった。
考えた。
考えても分からなかった。
ひょろい男が言った言葉は、深いようでいて、実は浅いような気がしたからだ。
でも、少し冷静になったおかげで、緑色グリーンのことばかり考えていた頭がリフレッシュした。
緑色グリーンにお色気作戦を仕掛けに行った。
おやっさん局長は、カメラを回しまくっていた。
桃色ピンクを録りまくった。
しかしながら、人間の気持ちというものは不思議だ。
桃色ピンクのことばかり追って、桃色ピンクのことばかり撮って、桃色ピンクのことばかり考えていたら、「好き」という気持ちが先行しすぎて「嫌い」になりかけた。
たまたま隣に居合わせたひょろい男が「桃色ピンクさんは、かわいいですよね」としみじみ言わなければ、そのまま「嫌い」になっていたに違いない。
危ないところだった。
黄昏時にここぞとばかりに黄昏ていたのは、青色ブルーだ。
恋人岬に立っていた。
桃色ピンクはなんだか機嫌が悪くて、結局、写真を取らせてくれなかった。
「あぁ、秋葉原に帰りたい」
そう呟いた。
「離れるとさらに好きになりますよねぇ」
ん!?
青色ブルーはびっくりして、後ろを振り向いた。
いつからいたのか、ひょろい男が立っていた。
「分かりますよ。僕も会いたくてたまりません」
「き、君も秋葉原に・・・?」
いや、まさかそんなわけはない。
どうせ会いたいのは実家にいるお母さんとか、恋人だろ。
・・・こ、恋人だと?
こいつ、こんなにひょろひょろのくせに恋人などいるのか!!
ちきしょう!
俺の恋人は、ミルクルポンのヨリちゃんだ!!
リア充め。
調子に乗りやがって。
青色ブルーは、腹が立ってきた。
もし恋人に会いたいとか言い出したら、ここから突き落としてやる。
「秋葉原というか、恋人に会いたいんです」
ひょろい男は遠い目をして言った。
青色ブルーは、ひょろい男を突き落とすために動いた。
「ヨリちゃんに・・・」
ん?
ひょろい男の言葉に、青色ブルーは動きを止めた。
「・・ヨリちゃんに会いたいんです。ミルクルポンのヨリちゃんに」
そう言って、ひょろい男は海の向こうを見ている。
青色ブルーも静かに「俺も会いたいよ、ヨリちゃんに」と言った。
Guamの美しいサンセットが二人を包んだ。
下っ端は、楽しんでいた。
本部から連絡が無いことをいいことに楽しんでいた。
ヒーローたちとかなり親交を深めた。
もはや昔からの友人のようだ。
でも、楽しい時は長続きしない。
なぜなら敵は情報収集には長けているからだ。
「基本的にヒーローは暇である」
-11ヒマ- 2013.1.17