「基本的にヒーローは暇である」

 

14ヒマ

「なぁ、俺は思うんだよ。たまにはこういうことがあっても良いんじゃねぇかって」
赤色レッドが言った。
砂浜に座っている。
海から来る風に、長くない髪の毛が揺れた。
他のメンバーは、赤色レッドを取り囲むように立っている。
「肩を、あいつらの肩を透かしたかっただけだよ」
赤色レッドはふて腐れたように言った。
みんなは黙っている。
そこで年長者のおやっさん局長が口を開いた。
「それじゃあ、Nipponの一般人はどうするんだよ!?お前のその勝手な行動で、関係の無い一般人がやられるかもしれないんだぞ!!」
怒った風な勢いを出した。
でも、片手にカメラを持って、桃色ピンクを撮っている。
「そうだ!!」
次に声を荒げたのは、青色ブルーだった。
「秋葉原が襲撃されたらどうするんだ!?そ、それから、ミルクルポンのライヴだって行けなかっただろうが!!」
一番の自分勝手は彼かも知れない。
黄色イエローは、蕎麦を食べている。
どういう訳かよく分からないけれど、蕎麦を食べている。
立ち食いそばだ。
今まさにめんつゆに蕎麦を沈めている。
それを口に運ぶ。
わさびが効いたのか、眉間にシワを寄せた。
桃色ピンクは険しい顔をして黙っていた。
でも、心の中は緑色グリーンと常夏を体験できてとてもHAPPYな気分で一杯だ。
緑色グリーンが口を開いた。
「でもさ、今から帰っても日曜には間に合わないから、このまま楽しんじゃおうよ!」
子供のような笑顔で言った。
みんながなんとなく不謹慎なのは、まだヒーローの心を取り戻す前の土曜日だからである。

 

そして、Nipponでは日付が変わり、日曜日になった。
ヒーローたちの心も、Guamにいるとはいえ、ヒーロー仕様になった。
一番激しく後悔をしたのは言うまでもなく、赤色レッドだった。

「ちっきしょーー!!! 何で!! 何でこんなことしちまったんだよ俺は!!!」
赤色レッドは砂浜に握りこぶしを沈めた。
すかさず黄色イエローがフォローした。
「ごめんよ。俺たちが止められなかったばっかりに・・・」
「違うわ!! 私も、私もGuamを楽しんでいたもの!!ヒーロー失格よ!!」
桃色ピンクも叫んだ。
「ちっ。俺たちは馬鹿だ。敵の罠にでもハマったみてぇによ。Nipponでは沢山の命が消えていくんだろうな」
そう言った青色ブルーに「やめろーーー!!!!」と赤色レッドが掴みかかった。
「それでも、お前はヒーローなのか!? 簡単に、命が消えるとか言ってんじゃねぇよ!! 俺たちが諦めてどうするんだよ!!」
もともとは、赤色レッドが企てたことなのに、なぜか青色ブルーが怒られた。
だけどみんなの心はヒーロー仕様になっているために、誰もそのことを突っ込まない。
青色ブルーも、自分の言ったことを反省した。
「とにかくさ、何かしら策を考えようよ。赤色レッドが言うように、諦めたら終わりだからさ」
緑色グリーンは冷静だった。
上手くみんなをまとめた。
そして、最後におやっさん局長の掛け声だ。
「よし、みんな、まずはどうやってNipponに早く帰れるか調べよう!!」
日曜モードのおやっさん局長は、桃色ピンクをよこしまな気持ちで見ない。
そこへやって来たのは、敵の下っ端だ。
一人だ。
偉い敵に命令されたからだ。
下っ端は高々と声を上げた。
「待てーい!! Nipponに帰る必要はなーい!!」
「な、なんだと!?なぜ、貴様がここに!?」
赤色レッドがそう言うと、ヒーローたちは、戦闘体制に入った。
下っ端は戦闘用スーツを着ているため「飛行機で出会ったひょろい男」とは思われていない。
「ぬははは!! ここでお前らを倒すためにやってきたのだよ!だからNipponに帰る必要はない!!」
下っ端は日曜日の悪役ムードで、普段より強気だ。
その姿を木陰から見守っているのは、偉い敵だ。
「行くのだ、下っ端!!」と静かに、でも力強く呟いた。

 

所変わって、Nippon。
敵の本部には偉い敵から連絡があった。
「今回はGuamでヒーローたちと戦う予定だ。貴様らはMt.TAKAOの標高でも調べておけ」
その連絡の後、敵たちは「Mt.TAKAO緊急会議」を開いた。

 

そして、Tokyo。
「え?なに、今日って日曜だよね?」
「悪者、なかなか現れねぇな」
「いつも昼間にはドンパチやってんのになぁ」
「おかしいなぁ」
「風邪でもひいたんじゃねぇの?」
「敵が?」
「いや、ヒーローが」
「ヒーローは風邪ひかないだろ」
「じゃあ、敵か?」
「敵もひかないだろ」
「じゃあ、どーなってんだ?」
「田中さん家なんて、戦いに巻き込まれたくないからって、わざわざGuamに逃げたのに」
「俺だって、今日の昼間の予定空けておいたのに」
「なんか、あれだね、肩透かしだね」
そんな声が街を包んでいた。
肩透かしを食らったのは、ヒーローと敵の戦いに備えていた、一般人だった。
そのことを赤色レッドは知らない。
「つーかさ、ヒーローって敵と戦わない時って何してるわけ?」
「さぁ?暇だろ。基本的には」

 

 

おわり

「基本的にヒーローは暇である」
-14ヒマ-  2013.1.20


コスレンジャー5人セット

基本的にヒーローは暇である14