「基本的にヒーローは暇である」

 

13ヒマ

昼時。
黄色イエローは蕎麦を食べていた。
いつの間にか、飛行機で出会ったひょろい男が見当たらなくなった。
仕方がないから一人で蕎麦を食べていた。
一人だから油断をした。
めんつゆにわさびを多く入れすぎたのだ。
鼻がつーんとなる。
その刺激のおかげで、ビビっと気付いた。
時差があるから、今日出発してもNipponに着くのは日曜日だ!!
黄色イエローは席を立った。
蕎麦を残して行くほどの慌てっぷりだった。
「まずいぞぉ!! 赤色レッド!」

 

桃色ピンクはすでに赤色レッドを探していた。
ホテルの朝御飯を食べている時に、緑色グリーンが「今日帰ったらNipponには日曜日に着いちゃうな。桃ちゃん、赤色レッドに話を聞いた方がいいかもしれない」と話した。
確かにちょっとマズイ。
「とりあえず、赤色レッドを探そう。僕は外を探してみるから、桃ちゃんはホテルの中を探してくれない?」
緑色グリーンは、普段子供っぽいのにこういうときは頼り甲斐がある。
「こういうところが好きなんだよなぁ」
桃ピンクは声に出さずに思った。
それから、緑色グリーンの心のように真っ白な牛乳を飲んだ。

 

桃色ピンクは急いで探した。
赤色レッドを。
バーにもいないようだった。
どこだろうか。
緑色グリーンからも連絡がないから、見つかっていないのだろう。
「早く見付けないと」
桃色ピンクは小走りをしながら呟いた。
その姿をばっちりビデオに納めているのが、おやっさん局長だ。
「慌ててる桃色ピンクもいいねぇ」と呟いた。
ん?
それにしても何でそんなに慌てているんだ?
おやっさん局長は疑問に思った。
緑色グリーンとはぐれたのか?
ふとビデオの液晶ディスプレイを見た時だった。
「おいおい!!」
おやっさん局長は思わず声を上げた。
「もう、帰らないと不味いじゃねぇか!!」
おやっさん局長が見たのは、液晶ディスプレイに表示された日付だった。
おやっさん局長も赤色レッドを探しに走った。
走った振りをして、やはり桃色ピンクのあとを追って撮った。

 

青色ブルーは、真っ青な顔をしていた。
時差のことを忘れていた。
青色ブルーは時差に弱い。
いや、時間に弱い。
というか、頭が弱い。
「今日、Nipponは土曜日・・・。ということは、ミルクルポンのライヴじゃないか!!あーー!!!」
ふかふかのベッドを叩いた。
舞い上がった埃で、ゲホゲホむせた。
その時である。
悲しみにくれている場合ではないじゃないか!!
ブルーは気付いたのだ。
早く帰らなければ、日曜日の敵との戦いにも間に合わないと。
ていうか、今日のミルクルポンのライヴ!!
平日の青色ブルーは、敵のことよりもまずはアイドルの事が大事だった。
「ちきしょう。赤色レッドめ!!」
そう言うと、部屋を飛び出した。

 

偉い敵は、下っ端を怒りに来たというよりも、ただ常夏に来たかっただけのようだった。
「Mt.FUJIの標高についての議論も一段落したしな」
そう言って、アロハシャツでトロピカルなドリンクを飲んでいた。
下っ端は胸を撫で下ろした。
その安堵感について、「心臓が珊瑚礁になりそうなくらい緊張した」という分かりにくい比喩を使って表現していた。
この言葉は、ヒーロー史には残らない。
そして、下っ端は切り出した。
「お言葉ですが、今日Nipponに戻っても着くのは日曜ですがどうしますか?」
偉い敵はびっくりした。
びっくりして、トロピカルな飲み物を鼻から出した。
「え!?え?え?不味いよね、それ不味いよね?」
「ま、ま、ま、不味いです」
偉い敵のあまりの動揺っぷりに、下っ端も動揺した。
「えー。どうしよ。どうしようかなぁ」
「どうしましょうか・・・」
「んー。あれだ!じゃあ、もう、ここで戦おう!いるんでしょ?ヒーローも」
「え?あ、い、いますけど、でも、僕とあなた様しかいないですよね?」
「いいじゃん!常夏だし!!つーか、俺はボス敵なアプローチだから、お前一人で行けよ。」
そう言ってトロピカルなドリンクを飲んだ。
「え!?え?え?えええー!?」
下っ端のあまりの動揺っぷりに、偉い敵は笑ってしまい、トロピカルなドリンクを鼻から出した。

 

 

「基本的にヒーローは暇である」
-3ヒマ-  2013.1.19


コスレンジャー 黄

基本的にヒーローは暇である13