恋が上手くいかないのは多々あることさ
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「とりあえず、映画だろ」
友達は1+1の答えを言うように、いとも簡単に言う。
俺もそう思う。
とりあえず、映画だろ。
そう。
いつだって、答えは出ているのだ。
映画の後は食事でもしたら良い。
お腹が空いていなければ、街を歩けばいい。
家具屋とか雑貨屋が適当に遊べていいだろう。
そんで、そのあとは、次会う約束でもして適当にバイバイだ。
大体そんなもんだ。
あとは、俺がいかに楽しい時間を提供できるか、またはいかに相手をエスコートできるかで決まる。
やることは分かってるし、考えも浮かぶ。
ただ、ひとつだけ問題がある。
「今度、映画でも行かない？」という始まりの呪文を唱える勇気が俺にあるかどうかという、とても大きな問題だ。
当然、直接なんて言えるわけない。
俺の所有する勇気は、常になけなしなのだから。
ここは文明の利器に頼る。
メールやLINEだ。
だがね、送信ボタンを押すとき必要な勇気といったら、並大抵のものではない。
そりゃね、顔が良くて背が高くてお金持ちだったらね、余裕で押しますよ。
タッチパネルが追い付かないくらいの回数押しちゃいますよ。
でもね、俺はそういう男からはかけ離れているわけで、故に躊躇するわけだ。
だからまずは、なけなしの勇気を少しでも増やすために、風呂に入る。
熱いのね。
温いのじゃダメなんだよ。
熱いので、じっくり入る。
それから牛乳イッキ飲み。
カルシウムは勇気に不可欠な気がしてならないからね。
そしたら、あれだよ、次はテレビ見て笑う。
笑って心をほぐした上で、テンションをあげるんだ。
そのあとで「いよいよ送信するのか!?」と、自分を追い込みながら無駄に携帯をいじる。
今日、何度見たか分からないFacebookとかTwitterとかを見る。
でも、こういうときに限ってみんな更新しないんだよな。
そんなことしてたら夜も更けて「あぁ！もう！くそ情けねぇな俺!!」って独り言を呟く。
で、朝になる。
なんだこのくそみたいな循環は。
やはり、俺の所有する勇気はなけなしである。
だがしかし、あるとき思い付いた。
「今度、映画でも行かない？」という誘いの呪文自体が、俺のなけなしの勇気では対応できないのではないかと。
もっと他の言い回しであれば、なんとかなるんじゃないのか？
要するに、俺のマジックポイントでは「今度、映画にでも行かない？」の呪文は唱えられないというわけだ。
そこで、俺は考えた。
寝ないで考えた。
いや、本当は寝た。
でも、思い付いた。
思い付いてしまった俺は易々とLINEの送信ボタンを押したのだった。
で、その次に問題となるのは「返信待ち」という果てしない時間を過ごす上に、「送信してしまった」という大いなる後悔と向き合わなければならないということだ。
「恋が上手くいかないのは多々あることさ」-1-
2013.3.31
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