恋が上手くいかないのは多々あることさ

 

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バイトが終わって、休憩室でコーヒーを飲んでいた。
休憩室はそこそこ広くて、長いテーブルが2台並んでいる。
私は、入り口から遠いテーブルに座った。
大体、いつも同じ席。
コーヒーを一口飲んでからケータイをチェックすると、LINEのメッセージが入っていた。
それを読んで最初に出た感想は「めんどくさい」だった。
てか、気持ち悪い。
なんなのこれ。
大学のゼミで一緒の男からだった。
以下、全文。
『暖かくなってきたから、ポップコーンでも食べませんか?映画でも楽しみながら。』
は!?
なんかもうどこからツッコんだらいいのか分からないし、そもそも意味分からないし!!
映画!?
映画なの!?
映画に誘っているの!?
でも、メインはポップコーンなの!?
あぁ、バイトの疲れが3割り増したわ。
憤慨していたら、休憩室に人が入ってきた。
まぁ、入ってくることは知っていたんだけど。
「お疲れ様でーす」
ちょっとハニかんで声をかけた。
彼も「お疲れ」と少し笑って言う。
私は彼を待っていたわけだ。
バイト終わりのこの時間が楽しみなんだから!
彼は当たり前のように私の正面の席に座った。
「今日も忙しかったね」
「そうですね!でも、暇よりはいいです」
「確かにね」
そう言って笑う彼は私の一個上で、私より少し早い時期からここで働いている。
素性はあまり知らない。
私は、今日こそ仕掛けようと決めていた。
なぜなら、春だもの。
「あの、お花見しました?」
「いや、してないなぁ。もう散っちゃうよね?」
「そうですよ!早くしなきゃ。あ!帰り道に桜並木ありますよね?お酒買って、歩きながら見ませんか?帰るついでに」
完璧に言えたわ。
うん。
流れも自然。
あとは、彼次第ね。
「いいね!」
お!よしよし。
「じゃあ、さっそ・・・」
「でも、ごめん、今日はちょっと用事があるんだよね」
「あ、…そうですよね。急でしたからね。また…今度にしましょ!」
「悪いね。次は行くね」
「いいんですかぁ~?じゃあ、その時はよろしくお願いします!!」
私はお茶らけた。
でも、次が無いことを私は知っている。
だって、彼は明後日から旅行に行くって言ってるし、私も学校あるし、シフト被るの一週間後ぐらいだもの。
桜、散っちゃうよね。

 

帰りは一人で桜を見て帰った。
街灯に照らされる桜は綺麗で、ケータイのカメラで撮ろうとしたけど、明るさが足りなくて上手く映らなかった。
何度かチャレンジしたけど、途中で「何でこんなに一生懸命になってるんだろう」と思えてきた。
はぁ。
ため息をついた。
そのままケータイでFacebookを見た。
流し読み。
内容なんて頭に入ってこないし、誰が何を食べようが、どこに行こうが、どうでも良かった。
ふと、LINEのことを思い出した。
私は「めんどくさいなぁ」と小さく呟く。
LINEの嫌なところは、読んだかどうか分かってしまうところだ。
無視したらしたで、ゼミで気まずいからなぁ。
返さないとなぁ。
そして、私はテキトーに返信を打つ。
以下、全文。
『ゴメン、サークル忙しいし、バイトもあるから、ちょっと難しいかも』

 

 

「恋が上手くいかないのは多々あることさ」-2-
2013.4.1


チンしてキャラメルポップコーン RE-935

恋が上手くいかないのは多々あることさ 2