マリー

 

7

その二人はショッピングセンターにいた。
ブサイくんとカワイちゃんだ。
端から見ればそれはデート。
しかし!
ブサイくんの頭の中は、あの本屋さんのことで埋め尽くされている。
一方、カワイちゃんは隣にいるブサイくんの事で頭が一杯!!!
なんだか上の空で遠くを見るようなブサイくんだけど、カワイちゃんにとっては、じっと見ててもバレないから得をした気分になってる。
そして、いつも見せないその表情が格好良く見えちゃう、惚れちゃう、困っちゃう!!!!

というわけで、カワイちゃんはここでもブサイくんに振り向いてもらおうとするわけだ。
「ねぇねぇ、プレゼントどうする?」
「あー、どうしよっか」
「色々見ててもアレだし、アイスでも食べて少し考えない?」
「あー、そうしよっか」
「決まりっ!アイス、好きなんだぁ!」
カワイちゃんは、飛びっきりの笑顔で言う。
きっと、平常心のブサイくんならイチコロだろう。
だがしかし!
何度も言うが、恋は無慈悲なり。
ブサイくんの頭の中は益々、本屋のことで飽和状態。

アイスクリームを食べる。
アイスクリームを食べる。
プレゼントを考える。
アイスクリームを食べる。
プレゼントを考える。
プレゼントを考える。
アイスクリームを食べる。
アイスクリームを食べる。
アイスクリームを食べ終わる。
プレゼントを考える。
カワイちゃん、浮かれてる。
プレゼントを考える。
プレゼントを考えてる振りをする。
ブサイくん、上の空。
プレゼントが決まらないまま、歩き出す。

 

「プレゼント選ぶのって、案外、難しいねぇ。ブサイくんさぁ、イケメくんと仲良いんだから、何か思い付かない?」
カワイちゃんは至って可愛く言った。
「‥‥本」
ブサイくんはボソリと呟いた。
「え?本?‥‥あぁ!イケメくん、よく漫画本読んでるよね!!! そうだね!本にしよう!!! さすが、ブサイくん!!!!」
ブサイくんは心の声が漏れたことに気付いていなかった。
だが、何はともあれ本屋に行けることになったのだ。
エンドルフィンが脳内で踊り狂い、それはもうリオのカーニバル並みに盛り上がった。
でも、すぐに意気消沈。
今度は「どうしよう。もし、また会うことになって、心が高鳴ってしまったら、その時はもう‥‥」という考えが頭の中に充満するのであった。

 

そんなブサイくんの心配をよそに、運命は時に人を弄ぶ。
二人は本屋で再会することになる。
だが、先に言っておく。
恋はそこでも無慈悲なのだ。

 

 

「マリー」-7-
2013.6.14


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マリー 7
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