マリー

 

8

二人はあの本屋にいた。
カワイちゃんは早速、イケメくんのプレゼント用の本を選んでいた。
「漫画ってたくさんあるんだねぇ。何買えば良いか分からないや‥‥ブサイくん、分かる?」
カワイちゃんは横にいるブサイくんに聞いた。
しかし、ブサイくんにはそれが聞こえていない。
本屋に入った時点で、ブサイくんの心持ちは正常ではなかったからだ。
「ブサイ、くん?」
カワイちゃんはブサイくんの顔を心配そうに覗きこんだ。
そこでやっとブサイくんは我に返る。
「あぁ、ごめん。なんだっけ?」
「あ、漫画がね、たくさんあって分からないんだよね、何あげていいか」
「あぁ、そうか。‥‥あっちも見てみようか」
ブサイくんは歩き出す。
その時、わざとレジの前を通った。
確認するために。
そして、やはり見付けてしまった。
白い、肌。
ツヤツヤの白い、肌。
恐れていた通り、ブサイくんの心は高鳴った。
高鳴って、しまった。
「やっぱり、おかしいのかもしれない」
ブサイくんは、そう思って立ち止まってしまった。
その時である。
「あら、二人とも何しているの?」と、前日に引き続き、レジの近くにいたキレイさんが二人に気付き、話しかけてきた。
「あ、キレイさん!実はね、イケメくんの誕生日近いから、本をプレゼントしようと思って、ブサイくんと選んでたの」
カワイちゃんは、「ブサイくんと」というところを少しばかり強調して言った。
そして、キレイさんが手に持つ漫画本を見て閃いた。
「もしかして、キレイさん、漫画本詳しい?何をプレゼントしたらいいか分からなくて‥‥」
「そうだったの。じゃあ、一緒に選ぶわ」
「本当!?やったぁ!」
喜ぶカワイちゃんの横で、ブサイくんはこの世の終わりを目撃したような顔で、レジいるそれを見ていた。

 

キレイさんのおかげもあって、プレゼントする本は決まった。
しかし、本題はそこではない。
それはこのあと起きるのだった。

本を買うためにカワイちゃんとブサイくんはレジに並んだ。
キレイさんも自分の本を買うために、後ろに並んでいる。
レジに近づくにつれて、ブサイくんの心臓は、いよいよ口から飛び出しそうな程、ドキドキしていた。
ブサイくんとカワイちゃんの会計の番になった。
その時、カワイちゃんが「あ、消しゴム、無くなっちゃったんだよね。ついでに買お」と言って、レジ横に置いてあったMOMOの消しゴムを店員に渡した。
それを隣で見ていたブサイくんの心臓のドキドキは、一瞬にして収まった。
むしろ、心臓が止まるかと思うくらいだった。

 

 

「マリー」-8-
2013.6.15


プラス 消しゴムエアイン ER-060AI 40個入り

マリー 8
Tagged on: