マリー
12
カワイちゃんにマリーを買われてしまったその夜、ブサイくんはろくに眠れなかった。
マリーの事が心配で堪らなかった。
カワイちゃんは家で勉強なんかをするようなタイプじゃない。
だから、早速、ノートにその白いツヤツヤの肌を擦り付けられて削られるような事はないだろう。
でも、人生には万が一ということがある。
そんなことを考え出すと、心配で心配で堪らなかった。
ブサイくんは考えた。
どうしたら、マリーを救えるだろうかと。
そして、思い付くのだった。
思い付いてからすぐに、布団から飛び起きた。
ヨレヨレのスウェット上下のまま家を飛び出して、コンビニへ走った。
コンビニに着くと、簡単な文具売り場に駆け寄る、見付ける、お買い上げ!!
MOMOの消しゴムお買い上げ!!
コンビニからの帰り道、ブサイくんは笑いが止まらなかった。
明日、朝イチで、カワイちゃんにマリーを貸してもらって、今日買ったMOMOと入れ換えればいいのだ。
簡単なことじゃないか。
明日になればマリーはこの手に。
「ふふふ」
ブサイくんの笑い声が不細工に響いた。
しかし、油断大敵であることは、分かりきっている。
なぜなら、恋は明日だって無慈悲なのだから。
「マリー」-12-
2013.6.19
マリー 12