「生まれて8年目」

 

7月1日 晴れ

今日は、ボクの誕生日だった。
だから、日曜日じゃないけどお父さんに会えた。
お母さんが得意じゃない料理をして、ボクのケーキを作った。
チョコレートのケーキで、おいしかった。
あと、唐揚げも作っていたけれど、それはお父さんに「これ揚がってないじゃん」と笑われていた。

プレゼントはとても短いSFのお話の短編集と、この日記帳。
ボクは、SFの本は欲しかったけど、日記帳は欲しいと言った覚えはなかった。
ボクは「何で日記帳をくれるの?」と聞くと、お父さんは言った。
「いいか、お前は生まれてから8年目を迎えるわけだ。8年って言ったら、会社じゃ中堅社員ってのになる。ようするに、少し偉くなるわけだ。偉くなると、日記の一つや二つは書くのさ。だから生まれてから8年目のお前も、そろそろ日記を書く時期なのさ」
お母さんはこう言った。
「あなた、本読むのすごく好きでしょ?でも、読むばかりじゃ退屈でしょ?たまには自分で書いちゃいなさいよ。文章」
ボクはそれを聞いて「やってみるか」と思い、日記を書くことにした。

 

日記を書くときには決まりがある。
まずは、なるべく漢字を使うこと。
分からない漢字は辞書で調べること。
それから、きちんと毎日書くこと。
「書くことは何でも良いから、続けることだ。そうすればお前は立派な中堅少年になれるだろう」
お父さんはそう言った。
ボクは立派な「中堅少年」になるために、しっかりと日記を書くことをベッドの上のチュリオさんに約束した。
チュリオさんはペンギンのぬいぐるみだ。
ボクの顔より大きい。
今日の昼間、お母さんに連れていかれてベランダに干されていたから、きっと太陽の匂いがするだろう。
ボクは今日もチュリオさんと一緒に眠る。

 

 

「生まれて8年目」-1-
2013.7.1




生まれて8年目 1
Tagged on: