「生まれて8年目」

 

7月3日 晴れ

今日も忍者ごっこをして遊んだ。
ボクは将来は忍者になりたいと思っている。
みんなが言うようなスーパーヒーローは本当は居ないけど、忍者は昔本当に居たことがある。
実績があったのだ。
お母さんも「働くのなら実績があるところにしなさい」と言うので、打ってつけだ。
だから、現実的な夢だと思っている。
でも、ライバルのペペロンはボクのこの夢を「いけないんだぁ!」と言う。
「何でだよ?」とボクが尋ねると、「だって、忍者ってスパイだもん。スパイは悪いことをするヤツだから、いけないんだよ!」と言った。
お母さんは「多分、彼も忍者になりたいのよ」と言うけれど、きっと違う。
ただ、ボクに張り合いたいだけだと思う。

今日だって、そうだ。
昼休み、校庭で、ボクが友達と楽しく忍者ごっこをしていると、ペペロンがやってきて「はい、そこの忍者ごっこ少年、止まりなさーい」と言ってボクの前に立ちはだかった。
「なんだよ?」とボクが言うと、ペペロンは言った。
「お前を逮捕しに来た」
「なに言ってんだよ?」
「忍者は悪いやつらだから逮捕する」
「意味わかんね!」
ボクは「土遁、砂嵐!」と叫んで、校庭の砂を足で一生懸命と蹴って、砂煙を上げると、友達たちと笑いながら逃げた。
ペペロンは追ってきたけど、足はボクの方が速い。
ぐんぐんと距離を離すと、そのうちにペペロンは半泣きになって、「お前が大人になって忍者になったら、俺がお巡りさんになってぜってぇ逮捕するから!!」と叫んだ。
そして、追いかけてこなくなった。
ボクたちはまた平和に忍者ごっこを続けた。

 

あー。
早く明日にならないかな。
忍者ごっこがしたい。
忍者ごっこだけしていたい。
でも、そんなことを言うとお母さんに「良いのね?忍者ごっこだけをするなら、それ以外は本当に何もできないのよ?ご飯も食べられないし、トイレにも行けないわよ?」と言われるから、この日記帳にだけ書いておく。

そうだ。
寝る前に、お母さんにバレないようにチュリオさんと忍術の練習をしよう!

 

 

「生まれて8年目」-3-
2013.7.10




生まれて8年目 3
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