「生まれて8年目」

 

7月5日 晴れ

今週の日曜日は、お父さんが来れなくなった。
この間、ボクの誕生日のために日曜日じゃないのに来てくれたからだ。
今週はあっちの家で過ごすみたいだ。
鉄棒の特訓をしようと思ったのに、どーしよう。
でも、それをお母さんに言うと「鉄棒くらい私にだって面倒見れるわ」と言っていた。
だから、鉄棒の特訓はお母さんにお願いした。
だけど、お母さんは「でもそれより、市民プールに行って泳がない?授業だってプールが始まるでしょ?泳ぎの練習をしましょうよ」と言うのだ。
ボクは泳ぐのは得意だ。
なぜなら、もうすでに水遁の術を心得ているからだ。
それよりも鉄棒だ!
カルボナーラさんみたいに綺麗に逆上がりをして、格好の良いところを見せなくてはならない。
そして、忍者への道を確実なものにしなくてはならない。
ボクはお母さんに鉄棒の特訓を断固としてお願いした。

 

夕方は、近所のスーパーにお母さんと買い物に行った。
スーパーの入り口で買い物かごを取るとき、「夜ご飯、何食べたい?」と聞かれる。
ボクはそのとき、いつも困る。
だって、特に食べたいものはないのだもの。
強いて言えば、スーパーの向かいにあるケーキ屋さんのモンブランが食べたい。
でも、それを伝えるのはもう少し先が良い。
買い物が終わって、スーパーを出た辺りで言うと効果てきめんなことをボクは知っている。
とりあえず、お母さんには「何でも良いよ」と言う。
すると「何でも良いねぇ。じゃあ、公園の鉄棒を引っこ抜いて炒めますか」とお母さんが言った。
「それを食べたら、逆上がりなんて朝飯前になるわよ」
ボクはそれに笑った。
笑っている間に、お母さんは夜ご飯のレシピを決めたみたいで、さっさと買い物をした。

スーパーを出たとき、ボクは作戦に踏み切った。
「モンブラン食べたいなぁ」
甘えてみせる。
お母さんはケーキ屋の方を見て「いいわね」と言った。
作戦は成功である。
というわけで、ボクはまんまとモンブランを食べることができた。

 

そういえば、ペンギンのチュリオさんと相談した結果、「カルボナーラさん」というのも長いので、カルボさんにすることにする。

 

 

「生まれて8年目」-5-
2013.7.12




生まれて8年目 5
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