「ロール」

 

ロール6

私はバイトの暇な時間にチラチラとノートを見ます。
もちろん、「遅刻さんメイゲンノート」です。
このノート、元々は「名言ノート」だったのですがカンロさんが「それは迷言よ」と言ったのです。
でも私はそうも思えないので、間を取って「メイゲン」にした訳です。
日本語って便利ですね。
そう言えば、今日の遅刻さんのメイゲンは「便利を並び替えると利便だけど、その先には何も待ってない」でした。
どういう意味かはさっぱり分かりません。
と、そんな事を思っていたらあっという間に正午です。
バイトは終わりです。

 

ロッカールームでユニフォームの上着を脱いでいると、カンロさんが入ってきました。
そして言いました。
「アキホっち、上にユニフォーム着てると全然分からないけど、おっぱいでかいよね」
私はそういうことを言われるのに、慣れっこだったので笑って誤魔化します。
「あ、あの遅刻男もそれが狙いか!?」と言ってカンロさんは大きく笑いました。
「そんなこと言ったらカンロさんも狙われますよ。カンロさんも大きいじゃないですか」
カンロさんもナイスバディーなのです。
「そんなことになったらすぐに警察に付き出すわ!!」
そう言ったカンロさんの目は本気でした。
本気すぎてまだ何の罪もない遅刻さんが、本当の犯罪者のような気がしたくらいです。

 

私はコンビニを出ると電車に乗るために駅まで歩きました。
もう少しでこの生活サイクルも変えなければならないかもしれません。
そう思うと少し寂しくなりました。
妙に感傷的になります。
それは、やってきた秋のせいでしょうか。

 

 

「ロール」-6-
2013.11.23

ロール 6
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