「基本的にヒーローは暇である」

 

6ヒマ

赤色レッドは月曜だっていうのに虚ろだった。
パチンコ台の前に何時間座っているか分からない。
煙草も何本吸ったか分からない。
昨日の敵はちょっとやっかいで、逃げられた。
今週の日曜にもう一度戦う感じになるだろう。
めんどくさい。
そんな時、ふと思い付く。
自分の思い付きに、はっとして思わず吸っていた煙草を落とした。
「もし、もし俺達全員がHawaiiあたりに行ってしまったら敵もやって来るのか」
そんな思い付きだった。
考えてみれば、いつだって俺達は首都TOKYOを守っているじゃねぇか。
もう飽きたよ。
ていうか、何であいつらはまずNIPPONから潰そうとするんだ?
全然分からねぇ。
赤色レッドは虚ろだったが、まだ月曜日なので少しばかり冴えていた。

正義の心を日曜日に置いてきた赤色レッドは、想像した。
今週の日曜日、せっかく攻めてきたのにヒーローが誰も登場しなかったとしよう。
敵は「え?肩透かし食らった感丸出しだわぁ」という状態になる。
それを想像して楽しくなった。
「ククク。よし、Hawaii行ったろ。肩、透かしたろ」
静かに笑いながらそう呟く。
そして、赤色レッドは心を踊らせてパチンコ屋を出た。
余った玉は誰かにあげた。

 

おやっさん局長を含めた全員に、赤色レッドからメールが届いた。
「ワイハ、行っちゃう??」
そのメールを見て、それぞれ色々と想像した。
黄色イエローは「Hawaiiで蕎麦を食べるのもまた一興!!」と張り切った。
青色ブルーは「常夏にもアイドルはいるのか?」と思考に耽った。
桃色ピンクは「二人で行く初海外だね!水着買わなきゃ!!」と緑色グリーンに笑顔で言った。
緑色グリーンはそれに対して「シュノーケル!!」と子供のようにはしゃいだ。
おやっさん局長は、桃色ピンクの水着姿を想像して「うぐっ」と言った。

 

情報収集に長けている敵もまだこの事は知らない。
昨日戦闘が終わったばかりだというのに、昼夜を尽くしてNIPPONで一番高いMt.FUJIの標高について議論していたからだ。

 

 

「基本的にヒーローは暇である」
-6ヒマ-  2013.1.12


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