あるアパートでの一件

 

6

103号室の住人

一世を風靡しているゲーム機メーカー「サニー」は、つくづく良いゲーム機を作る。
隣にデブを携えて、僕はコントローラーを握っていた。
「で、何しに来たの ?」
デブに言われる。
「そうだ!こんなことをしに来たわけじゃない!協力してくれ!例のヘリで!」
「良いけど、タダでは無理だよ。僕は見ての通り、燃費が悪い。」
「もちろんだとも。友よ、2リットルコーラ1ダースでどうだい。」
オーケーのサインの代わりに、 彼は、とてもしんどそうに立ち上がり腹の肉を震わせた。

 

僕は、お隣さんの102号室にいた。
全ては、部屋で飼育しているコオロギさんを輸送するためだ。
THE証拠隠滅。
まさかだった。
まさか、管理人は覗きをしていたわけではなく、俺の部屋から逃げ出したコオロギを駆除していたとは。
このことがバレたらバイトの子に嫌われるどころか、次にベッドに縛られるのは僕だ。
しかも、いとこである管理人を売ったとなれば、親戚中の反感を買いかねない。
なんとかせねば!
どげんかせんと!
というわけで、ここのおデブちゃんの出番である。
彼の操縦するヘリで、部屋にいるコオロギどもをどこかへ輸送してもらう。
我ながら、素晴らしい作戦だ。

 

まずは、僕の部屋に行き、荷物であるコオロギを確認してもらった。
「うわ!こんなに増えたの!?やばいね。逃げ出したりしてないの!?」
「逃げ出すわけないだろ?しっかりと管理しているんだ。」
そう、逃げ出した分は、管理人がきちっと管理しているから心配ない。
「何回か往復しなきゃダメだね。で、どこに捨てるの?」
「バカ野郎!捨てないよ!別の場所で一時保管だ。捨てたら、今までの苦労が水の泡だろうが!」
「良いじゃん。どうせ大した収入にはならないんでしょ?」
「舐めるな。そこそこ儲かる。だから、決して捨ててはならん。」

毎年、この時期になると、バイトとは別にコオロギを育て、業者に売るという内職をした。
観賞用だか何だか知らんが、とりあえず、売れた。
「とりあえず、近くの公園の草むらにでも運んで、ビニールシートでもかけておいてくれよ。僕は別件を済ますから。」
「ラジャ!」
デブ大佐は、ちっともキレのない返事をした。

 

さてさて、僕は交番に行って警察を呼んでくるとしよう。
あくまでも、管理人を犯人に仕立てなくては。
全ては、大好きな彼女に好印象を与えて、あわよくば、どうにかなるために!

 

 

「あるアパートでの一件」-6-
2013.7.22


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あるアパートでの一件 6