マリー

 

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彼はとても健全な男子高校生だ。
身長は中の中。
体重も中の中。
顔立ちも中の中。
運動神経も中の中。
頭の良さも中の中。
付け加えるなら、学年も中の中の2年生である。
以上のことを受けて、便宜上、彼を「詰まらない男」と呼ぶことにするのは簡単だ。
しかし、それはあまりにもヒドイので止めてあげようと思う。
そこで、彼をこう呼ぶことにしよう。

ブサイくん。

実にしっくりくる呼び方だ。

 

普段の彼と言えば、とても面白味のない生活を送っていた。
三分もあれば、彼の一日を語れるので、チャレンジしようと思う。

朝起きて、制服に着替える。
よく盗まれるため、何台目か分からないママチャリに股がって学校へ。
「うぃ!」というとても恥ずかしい挨拶を仲間同士で交わしたあと、何人かで連れだってトイレで髪型をチェック。
彼らは、ワックスを貸すとか貸さないとかの昭和のご近所付き合いみたいな、友情で結ばれている。
その後、授業に出る。
休み時間。
仲間と女子を見たり携帯を見たりする。
授業に出る。
女子を見る。
授業に出る。
女子を見る。
女子を見る。
女子を見る。
昼休み。
購買でパンなどを入手して食べる。
ちなみに、「なんだかモテそうだから」という何の裏付けもない考えに基づき、いちごオレを愛飲している。
午後の授業に出る。
女子を見る。
女子を見る。
放課後。
仲間と心底下らない話をして過ごす。
きっと、ネジについて話す方が有意義に違いない。
そして、たまにバイト。
帰宅。
夕食。
仲間と心底下らないラインのやりとり。
きっと、電車の車掌のモノマネをする方が有意義に違いない。
テレビ。
入浴。
仲間と心底下らないラインのやりとり。
きっと、日めくりカレンダーをめくることの方が有意義に違いない。
就寝。

どうだろうか。
憐れみさえ覚えてしまえる、彼の生活は。
しかし、嘆くことはない。
この話は恋の話である。
そう。
ブサイくんは恋をするのである。
ではなぜ、この話のタイトルが「ブサイ、高2の夏を前に恋をする」ではないのか。
それについては、明日話すことにしよう。

 

 

「マリー」-1-
2013.6.8


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マリー 1
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